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 地ビールや地酒など、地場産品が注目されている昨今、“地の利”を生かした「地チーズ」が活気づいている。酪農というと北海道のような広大な土地が必要と思われがちだが、首都圏近郊で、小規模ながらもチーズを作る元気な酪農家たちがいる。

 現在、日本のチーズ農家は約200軒。伝統食ではない日本のチーズはどんな種類も作れる自由さがある一方、名称も多様で、食べるまでどんな味か、予想がつかないところもある。

「衛生面、そして見た目は素晴らしい。だけど味は今ひとつ」というのが海外における日本のチーズ評だと、チーズショップ「フェルミエ」の代表でNPOチーズプロフェッショナル協会の会長、本間るみ子さんは語る。本間さんが国内の生産者を訪ね始めて20年以上経つ。

「フランスの生産者を訪ねるうち、おいしいチーズは作る人たち、そして環境から生まれると実感しました。それは日本も同じ。放牧ができないなどヨーロッパほど環境が整わない中、意欲のある生産者が多い」

 中でもモッツァレッラなどのフレッシュチーズは、

「鮮度が命なので、消費地の近くで作られるものがやはりおいしい。賞味期間が短く大手企業が作りたがらないので、都市部でチーズを作る小さな工房にも勝算があると思います」

 と本間さんは言う。

「消費者にとっては現場を訪ねることができ、生産者に会えるのも魅力的です」

 近年、日本の酪農業は受難続きだ。輸入飼料の高騰、猛暑による搾乳量の減少、高齢化による廃業のほか、牛乳の生産量減少により、バターが品薄になったことは記憶に新しい。

 また、環太平洋経済連携協定(TPP)が妥結した場合、安価な乳製品が大量に輸入され、日本の酪農は大きな打撃を受けると懸念されている。

 しかし、そんな中で国産ナチュラルチーズの生産量は、13年度に前年度比4.3%アップの4万8534トンと過去最高だった。

 フランス人が1年間に食べるチーズの量が平均約26キロに対し、日本人は平均約2キロ。まだまだ拡大の余地ありと関係者は意欲的だ。農林水産省でも給食にチーズを出すなど消費拡大も含めてチーズ生産者をサポートしていくという。

 首都圏で作られる「ご近所チーズ」には、生産者の思い、そして鮮度という魅力がある。ぜひ、応援したくなる地チーズとチーズ農家に出会ってほしい。

(野村麻里)

週刊朝日 2015年4月10日号より抜粋