任天堂にとって、あくまでもこの事業は自社のゲーム機プラットフォームに客を取り込むための手段に過ぎない。となれば収益性をある程度度外視する方向に進むという懸念もある。
また、提携して作ったゲームが本当にヒットするかどうかもわからない。本格的にスマートフォンゲームアプリに進出するのは、任天堂にとって初めての経験で、これまでのゲーム開発の手法が役に立つ部分は少ない。むしろこれまでのヒット作を量産してきた経験が邪魔になってしまうことすらあり得る。そもそも既存のゲームメーカーでスマホゲームアプリを大ヒットさせたメーカーはあるのだろうか?
そして、DeNAには他にも死角がある。それはグローバル展開に成功した経験がないことである。当然ながら任天堂が手がける事業なので、世界のマーケットを相手にするゲームを作っていかねばならない。
スマホゲームは、欧米や日本のように分厚いコンシューマ機のマーケットが存在する地域と、中国や東南アジアのようにスマホゲームが初めてのゲーム経験である人がほとんどの地域がある。地域別で展開のやり方が大きく違う。
結局、日本国外でスマホゲームアプリの大ヒットを出したことのないDeNAが、任天堂のIPをうまく活用してヒット作が出せるかどうかなのだが、いまのところ未知数というしかない。もちろんうまくいく可能性もあるが、期待されているほどヒットしない可能性も十分にある。そのときの両社のダメージは計り知れないものがある。
※週刊朝日 2015年4月10日号