作家の室井佑月氏は、メルケル首相や天皇陛下の発言がメディアで取り上げられないことに疑問を呈す。
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3月9日、ドイツのメルケル首相が来日した。メルケルさんは同日、築地の浜離宮朝日ホールで来日講演を行ったんだけど、これがじつに素晴らしかった。
メルケルさんは日本の問題点を、ソフトに、でもはっきりと指摘した。原発について、隣国との関係について、言論の自由について。
決して上から目線でなく、つねに寄り添って心配をしてくれる頼れる女教師みたいな感じだった。女性の活躍に期待するという我が国も、彼女のような方が出てくればいいと思った。
が、なんでなの? メルケルさん来日のことはあまりニュースにならなかった。来日したということはニュースでちょろっとやったけど、彼女の発言を取り上げなきゃ意味ないじゃん。
やっぱ、彼女が今の政府の考えと違うこと――脱原発、近隣諸国と仲良く、言論の自由は大切なこと――などの発言をしたからウザかったのか。政府の顔色がいちばん大事なメディアは、きっと面倒くさいと思ったんじゃないのかな?
それは、新年や3.11の天皇陛下のお言葉もおなじだ。陛下がどこでお言葉を発したかということに、あまり意味は感じない。なぜ、その内容を流さないのだろう。何時間もお話をされるわけじゃない。全部を流してもいい。
だって政府は、「新事態」などという新たな言葉を作り出し、アメリカにいわれるまま、自衛隊を海外のどこにでも派遣できるようにしたいんだし。
国民に考えさせる場を与えないということに、メディアはこのまま与(くみ)してていいのか?
いや、それは不味(まず)いと思っている番組もある。3.11、テレ朝の報道ステーションは見応えたっぷりだった。ほかの番組が「被災者に寄り添って」と去年、一昨年と、おなじ調子で誤魔化(ごまか)しているのに対し、報道ステーションはオープニングからたっぷりとどうにもならない高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題を報道した。
番組の最後、メインキャスターの古舘さんはこのようなことをいった。
「トイレのないマンションは造っちゃいけないといっている小泉元総理や細川元総理にこの場に来ていだいて、まったくお考えが違うであろう、再稼働と核のゴミはまったく関係がないとおっしゃっている宮沢経産大臣にもお越しいただいて、日本の電力を引っ張っている関西電力の八木社長にも来ていただいて、徹底討論している場をみなさんに見ていただきたい」
古舘さんは「でも現実、難しい」といっていたが、あたしたちが見たいもの、メディアとして見て欲しいものを、よく考えてくれているなぁと感激した。そういうことが難しいというのも、天晴(あっぱれ)なイヤミだわ。
※週刊朝日 2015年4月3日号
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