東京大学駒場キャンパス
東京大学駒場キャンパス
この記事の写真をすべて見る

「難関大の合格者に100万円の奨励金を支給する」。昨年11月、鹿児島県伊佐市が、市内の県立大口(おおくち)高校に入学者を集めるため奨励金制度を決めた。しかし、これに「お金で釣る教育は間違い」など批判的な声が殺到。制度が作られた経緯は、県教育委員会が定員割れの続く同校に昨秋、「来年度の新入生募集は2学級とする」と通告したことだ。

 隈元新(くまもとしん)市長(65)は高校が廃校になると、「人口減に拍車がかかるし、地元経済に打撃を与えます」と言う。制服やスポーツ用品、文房具や書籍、弁当など、高校生が多く利用する店舗が打撃を受け、地域から活気がなくなる。転出する人も増え、衰退してしまうのだという。

 伊佐市は県教委と話し合い、「15年4月から1学年2学級に」という方針をくつがえし、「15年7月の進路希望調査で80名以下なら2学級に」と猶予期間を引き出した。では、それまでに進学志望者をどうやって増やすかだ。

 隈元市長と市の企画政策課の担当者が同校の校長の意見を参考に対策を話し合ったが、そのとき参考にしたのは同県いちき串木野市の例だった。

 昨年2月、いちき串木野市は定員割れが続いていた市内の県立串木野高校の支援策として、▽国公立大に進学した生徒には大学の入学金(約30万円)を全額補助▽同校新入生に入学準備金として2万円支給▽部活動補助費として5千円支給、などを発表していた。

 ちなみに、この支援策発表後である今年の串木野高校の出願状況をみると、定員80人に対して73人が出願。志願倍率は昨年の0.4倍から、0.91倍へと倍以上に伸びている。効果が表れたといえそうだ。

次のページ