花粉に悩む人々には憂うつな季節がやってきた。日本気象協会の予測によると、今年のスギとヒノキの花粉の飛散数は東日本で昨年より2~3倍多く、西日本では少なめ。今シーズンをどう乗り切るか。
体質改善を図る免疫療法(減感作療法)で、すでに昨年10月から始まっているのが「舌下免疫療法」だ。花粉が飛ばない時期から毎日2年間、舌の裏から花粉のエキスをしみこませることで、体内に花粉の成分を少しずつ取り込んでいく。スギ花粉に慣れることで免疫細胞を異物と見なさなくなり、症状が緩和されるという理屈だ。
舌の裏側にエキスを垂らして2分間待ってのみ込むだけなので、従来おこなわれていた皮下注射による減感作療法のように、痛い思いをすることはない。
ただし、この療法は誰に対しても効果があるわけではない。免疫療法そのものが適さない人、従来の皮下注射による減感作療法のほうが合う人もいる。アレルギー疾患の診療を専門とする日本医科大学付属病院(東京都文京区)耳鼻咽喉科主任教授の大久保公裕医師が勧める患者は、全体の3割ほどだ。
「まず、生活リズムが崩れていて2年間毎日続けられそうにない人、鼻の粘膜が腫れているなど症状が強いケースには適さない。またスギ花粉以外にアレルギーがある場合は、それらにも対応できる皮下注射のほうがいいでしょう」
ところで近い将来、新しい治療法が登場しそうだ。アメリカで治療に使われるワクチン(JRC2―LAMP―vax)が近く日本にも入ってくるという。今年1月末に製薬メーカーがアメリカの企業とライセンス契約を締結。治験に向けて準備を進めている。
「このワクチンは治療用で、スギ花粉の主要アレルゲンの遺伝子を組み込んだ成分が入っており、数回注射すればいい。ハワイ在住の日本人を対象に効果を調べ、4回で症状が治まるとの結果が得られています」(大久保さん)
このワクチンもスギ花粉症に限られるとはいえ、治療の選択肢の一つになりそうだ。
※週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋