親や友だちとの関係、体や心のこと、お金の問題......。大人だけではなく、子どももさまざまな悩みや問題を抱えています。しかしそれをどこに相談すればよいのか、どうやって解決すべきなのか、わからない子どもが多いのではないでしょうか。そもそも、そうした声をあげていいということすら思いつかない子もいるかもしれません。
書籍『きみの人生はきみのもの 子どもが知っておきたい「権利」の話』は、子どもが持っている「権利」を紹介しながら、その権利をどう生かしていけばよいかについて書かれています。法学者の谷口真由美氏と、評論家でラジオパーソナリティとしても知られる荻上チキ氏が、子どもたちの24個の悩みや困った状況について話し合ったものをまとめた一冊です。
たとえば、事例のひとつに「家族の世話や介護をしていて、たいへん」というものがあります。学校に通いながら障害や病気のある家族などの介護や世話をしている子どもを意味する「ヤングケアラー」は、近年とくに注目されるようになった社会問題です。これを「子どもの権利」の観点から見ると、どのような解決法が考えられるでしょうか。
「子どもが学んだり、遊んだりしてすこやかに育つことは『子どもの権利条約』の複数の条文でも認められている重要な権利です。ですから、それが守られていないときには、助けを求めていいのです。心や体がくるしいときは、『助けて!』と言う権利をきみたちはもっているのです」(同書より)
まずは学校の先生やスクールカウンセラーに相談すること、次に行政のサポートを受けることを考え、さらには児童相談所に打ち明けるのもひとつの方法だと示しています。
同書に記されている考えは基本的に、子どもの権利について記されている「日本国憲法」「子どもの権利条約」にもとづいています。法の専門家がこれらをもとに解説してくれるので非常に説得力があります。また、助けを求めるべき先が具体的に紹介されているのも同書の良い点です。先ほどの悩みであれば、相談先として厚生労働省「児童相談所相談専用ダイヤル」、法務省「子どもの人権110番」、お役立ち情報として福祉や医療に関する情報を検索できるサイト「WAM NET(ワム ネット)」などの電話番号やURLが記載されています。
ほかにも「親が勝手に部屋に入ったり、スマホやケータイを見たりする」「学校のルールや校則を変えたい!」「SNSでいやがらせを受けていて、つらい」など、心・体・お金にまつわる悩みや問題を取り上げています。
「こうした権利のことや、相談先の情報を、ほとんどの子どもは知らないままで過ごしていると思います。それはとてももったいないことなので、この本で知識と情報を学んで、毎日の生活に活かしてもらえたらうれしいです」(同書より)
子どもたちが自分の人生を切り拓くうえで重要な知恵や情報が詰まった一冊になっています。この本がひとりでも多くの子どもの目に留まり、つらい状況を抜け出すための一助になることを願います。
[文・鷺ノ宮やよい]