編集者の末井昭さん(左)と写真家の神藏美子さん夫妻(撮影/倉田貴志)
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 セルフ出版(現・白夜書房)の設立に参加し、エロ本業界にこの男ありといわれた名編集者、末井昭。その妻で、写真家の神藏美子。二人は出会ったとき、妻と夫がある身で、妻の元夫は文芸評論家の坪内祐三氏だった。

 なれそめは1996年、夫が、妻が撮影する女装写真のモデルになったこと。夫はエロ本業界にこの男ありといわれた名編集者で、当時はギャンブル漬けの日々を送っていた。一方の妻は気鋭の写真家。

妻「モデルを探していたときに思いついたのが末井さん。まだ全然親しかったわけでもないのに」

夫「頼まれたのは荒木(経惟)さんの写真展のパーティーの席だったね」

妻「初めてのことなのにノリノリで撮られていたのが最初の印象だった」

夫「僕が意識しだすのは、喫茶店で何度か、撮った写真を見せてもらったりしているうちに……」

 出会いから日もたたぬうち、ままならぬ仲となった二人。しかし、当時それぞれ妻や夫がいた。恋におちた末井さんは家を捨て、ホテルを転々としながら会社に通い始める。

妻「家を出たと聞いたその日、わたしは荒木経惟さんとお会いしていて、末井さんと付き合ってると話したら、『アイツは俺が最初に惚れた男だからな』と言われた」

夫「衣類を入れた紙袋と現金300万円を持って家を出て、しばらくホテルを転々としてた。でも、この人は家を出てこない。ハシゴを外された感だったよね」

妻「これじゃ大変というので部屋を借りたのよね。でも末井は一つ見ると『ココでいいよ』。ほかも見ようよと行けば、そこでもまた『ココでいい』と言う」

夫「メンドクサイからね。家を飛び出したときは、投資に失敗して3億くらい借金があったんです。ギャンブルで返すしかないと思っていたころで」

妻「あのときは本当に大変で……」

夫「飛び出していなかったら、さらに借金を背負っていたかもしれないな」

(聞き手・朝山 実)

週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋

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