自民党の圧勝で幕を閉じた今回の衆議院総選挙。東大教授(社会経済学)の松原隆一郎氏と放送大教授(政治学)の御厨(みくりや)貴氏の論客2人による本誌恒例「国会通信簿」。次世代の党、生活の党と「評価なし」が続くなか、社民党は? そして、今後の安倍政権の最大の不安材料とは?

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御厨:当選は重鎮2人(平沼赳夫氏、園田博之氏)だけの次世代の党。

松原:田母神俊雄さんも東京12区から満を持して出馬しましたが、4万票も取れず最下位でした。

御厨:それを言ったらおしまいよ、みたいな政策がズラリ並んでいましたから。安倍さんは右といってもソフトで、まともに見える。

松原:石原慎太郎さんも引退。比例で一人も当選させられず、政界への影響力も失ったようですね。次世代は評価なし。

御厨:社民党は、党が消滅するかが大きな焦点でしたね。90年衆院選の獲得議席数は136。隔世の感があるけど、最後の砦は守った。

松原:でも票が出ているのは大分や沖縄。もはや地域政党です。

御厨:長年の歴史も踏まえて、殊勲賞のD評価です。

松原:続いて生活の党。小沢一郎代表は何とか16選を果たしました。

御厨:最後は自分の生活をしっかり守りましたね。岩手に張り付きで。さすがに今期で引退されるでしょう。おそらく。

松原:小沢さんは周りが勝手におびえることでパワーを維持してきましたが、野党統一も空振り。もう力尽きたという気がします。生活も、評価なしで。

御厨:15年、安倍政権の最大の不安材料は「人事」だと思っています。

松原:第3次安倍内閣で、通常国会を乗り切った後の人事ということですか?

御厨:総理に返り咲いて2年間、安倍さんはずっと「お友達人事」を抑制してきた。さすがにそろそろ、好き勝手にやりたいという思いがあるはずなんです。

松原:お友達以外の人と、あまり付き合いたくない方ですからね。できればお友達と改憲に向かいたい。

御厨:今回、解散の決定から消費増税先送りまで自分で決めた。選挙も大勝だった。今後4年間は自分のしたいことをしたい。そこで、菅義偉官房長官と目指す方向にズレが出てくる。安倍さんの有終の美を飾る4年間に、菅さんがどこまで付き合いますか、という話。

松原:菅さんは安倍政権の屋台骨ですが。

御厨:今の安倍1強は外からは壊れない。壊れていくとすれば内側。通常国会では原発再稼働や集団的自衛権が注目されているけど、閉会後の人事が最大のヤマ場だと思う。お友達を入閣させれば“待機組”の怒りを買う、菅さんが離れれば官邸は機能しなくなる。

松原:今の安倍自民党は決して盤石ではないと。

御厨:集団的自衛権だって、国会での議論はこれから。安倍さんは触れたがらないが、集団的自衛権が認められる場所に自衛隊が行って、隊員が亡くなることもあり得る。その場合だれが責任を取るのか。靖国に祀るのかという問題も出てくる。

松原:「イスラム国」空爆に参加するオーストラリアで、人質が死亡する立てこもり事件も発生した。集団的自衛権の行使で報復を受ける、「巻き込まれる」危険性も覚悟しなければならない。

御厨:米国に、集団的自衛権あるからどうだ?と言われてね。安倍自民党も順風満帆ではないです。

週刊朝日  2015年1月2-9日号より抜粋

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