ニキビが治った後に皮膚に凹凸ができる「ニキビ痕」も患者を悩ませる問題のひとつだ。

 和歌山県の児島蘭さん(仮名・22歳)は、思春期にできたニキビを治療せず放置していたところ、頬やあごにニキビ痕が残ってしまった。頬に赤ニキビがあるのも憂うつで、治療したいと思うようになっていた。そんなとき、和歌山県立医科大学病院で「フラクショナルRF」という、ラジオ波(以下、RF)を照射することでニキビ痕を改善させる最新治療の臨床試験が始まることを知った。

「フラクショナルRF」とは、レーザーよりもさらに周波数が高く肌の奥まで届きやすいRFを、極小の点状に照射するものだ。がん手術にも使われており、電波が発する熱で患部を焼き、傷ついた真皮が自らコラーゲンを作り出し再生する能力を生かした治療法と言われている。コラーゲンが作り出されると、肌がふっくらしてきめが整い、凹凸が目立たなくなる。臨床試験を担当した皮膚科の山本有紀医師は、こう話す。

「ニキビ痕がどうして起こるのか、学術的にはまだ十分にはわかっていないのですが、真皮が何らかの変化を起こしたものと考えられます。レーザーは表皮の赤あざやシミには効果がありますが、RFはもっと深い真皮に傷をつけることから、ニキビ痕治療への効果が期待されていました」

 児島さんが1カ月に1回の治療を5回続けたところ、浅いニキビ痕は目立たなくなり、全体に凹凸の少ないきれいな肌になった。児島さんをはじめ、被験者21人の皮膚を採取して病理検査をおこなったところ、治療後は表皮の奥にある真皮の膠原線維が増えていた。膠原線維はコラーゲン線維ともよばれる。RF治療による刺激が、コラーゲンを再生させたというわけだ。

 さらに、フラクショナルRFにニキビ自体を改善する効果があることも発見された。

「私自身驚いたのですが、1回の照射で全員ニキビ自体が改善し、平均4個から1個に減りました」(山本医師)

 フラクショナルRFは、従来のレーザー等の治療方法に比べ「ダウンタイム」が短いというメリットもある。ダウンタイムとは、施術後に起きる腫れや痛みなどが治まり、普通の状態に戻るまでの時間のことだ。治療法にもよるが、従来は最短でもかさぶたが落ちるまで7~10日間程度は必要だった。

「RFは、個人差はあるものの、翌日にはもうメイクができるという長所があります」(同)

 フラクショナルRFをはじめ、レーザー治療などはすでに多くのクリニックなどでおこなわれているが、自由診療のため料金には差がある。現在、和歌山県立医科大学病院では臨床試験を終了し、フラクショナルRFでのニキビ痕治療は受け付けていないが、「クリニック宇津木流」(東京都千代田区)、「立川皮膚科クリニック」(東京都立川市)などで相談できる。

 山本医師は安心して治療を受けるためのポイントとして、次のようにアドバイスする。

「皮膚科専門医やレーザー専門医など、皮膚のことを十分理解してどんなトラブルにもきちんと対処してくれる医療機関で治療を受けることをおすすめします」

週刊朝日  2014年12月5日号より抜粋