老後の生活資金捻出に苦慮している世帯も多い中、注目されているのが「リバースモーゲージ」だ。持ち家を売らずに、家を担保にして現金を得るシステムで、欧米ではすでに普及している。
2013年の総務省家計調査によれば、60歳以上の夫婦2人世帯の1カ月当たりの消費支出は約24万6千円で、可処分所得は約18万7千円。つまり、日本の高齢者世帯は、毎月約5万9千円の貯蓄を切り崩しながら生活している。その一方で、65歳以上の高齢者がいる世帯の持ち家率は全国平均で80%を超える(総務省「国勢調査」から)。
年金給付水準の引き下げや、医療費の負担増が年々進む中、持ち家があっても現金がない「ハウスリッチ・キャッシュプア」な高齢者世帯が増えている。そこで今、高齢者の資金調達方法として注目されるのが、持ち家を売却せずにその資産価値を「現金化」できるリバースモーゲージだ。
住宅資産研究所の倉田剛氏が仕組みを解説する。
「簡単にいえば、高齢者が所有する住宅や土地を担保にして生活資金を借りて、亡くなった後に一括返済するシステムです。生きている間の返済義務は免除されており、契約者の死亡後に、担保物件を処分するか、相続人が代わりに返済することで一括清算します」
親しんだ家に住み続けながら、家の資産価値を生活資金に転換できるため、老後の資金が必要な高齢者世帯には好都合な制度だという。アメリカでは1960年代から普及している。
融資の受け方は、初めに一括でまとまった金額を受け取るタイプ、利用限度枠内で自由に引き出すことのできるタイプ、年金のような形で定期的に一定額ずつを受け取るタイプなど、さまざま。また利息についても、利息分だけを毎月支払うタイプ、利息を含めて死亡後に一括返済すればいいタイプなど異なる。
大別すると、社会福祉的な意味合いの強い国や地方自治体の「公的な制度」と、余裕ある老後資金の調達を目的とした金融機関の「民間の金融商品」に分けられる。
「公的」で代表的なものが厚生労働省の「不動産担保型生活資金貸付制度」。都道府県の社会福祉協議会が貸し付けの実施主体であり、貸し付け相談窓口は居住地の市区町村の社会福祉協議会となっている。これまで1224件の利用がある(03年から13年)。
65歳以上で、「市町村民税非課税」程度の低所得世帯が対象となっている。その上で、土地の評価額がおおむね1500万円以上の一戸建てを所有していることが条件。融資限度額は土地評価額の70%程度なので、たとえば、評価額2千万円の土地を持っていれば、約1400万円を借りられる。
※週刊朝日 2014年11月28日号より抜粋