女優の藤田朋子とアコーディオン奏者で作編曲家の桑山哲也は、2005年に結婚。このご夫婦、とにかく仲がいい。てっちゃん、トコちゃんと呼び合い、掛け合いには爆笑の連続だった。ミュージシャンと年上女優の運命の出会いとは……?
妻「私は歌が好きで、女優をしながらずっと自主的にライブをやっていたんです。2000年にミュージシャン仲間に誘われて彼のライブを聴きに行った。彼の第一印象は『親戚にこういうおもしろいおじさん、いるなあ』。アコーディオンのライブは初めてで、演奏も素晴らしかったけど、彼のトークが楽しくて」
夫「僕の彼女の第一印象は、『子どものころからテレビで見ていた人だ!』ですね」
妻「その後、彼に私のライブに参加してもらったんです」
夫「でも最初は全然意識もしなかったよね? 2回くらい共演して、そのあと2年くらい音信不通だったし」
妻「その後、つきあうきっかけになったのは……」
夫「やっぱりディズニーランドかな?」
妻「そのころメールのやりとりはしていて、私が『ディズニーシーに行きたいな』ってメールしたら、『僕も行きたいです』って」
夫「彼女、ディズニーマニアなんですよ。で、実は僕もディズニーランドが大好き」
妻「最初は4人で行くはずだったけど、ほかの2人が行けなくなっちゃった」
夫「二人きりで会ったのって、そのときが初めてだったんですよ。でも七つも年が違うし、僕は常に敬語で、恋愛の『れ』の字もあるわけがない」
妻「当時私が37歳で、彼は30歳になったばかり。いっぱい話はしたけれど、なかなか距離は縮まらなかった。私も、彼は若いし彼女もいるだろうなって思ってたし、あんまり妄想を膨らませても、後でがっかりしちゃうからって……」
数カ月後、ある夜のメールのやりとりが、二人の運命を決めた。
夫「僕が近所のバーで飲んでいるときに、彼女からメールがきたんです」
妻「あのね、私、この人が酔っ払うとどんなにすごいことになるか、結婚してから知ったんです。前の晩にしゃべったこと、翌朝、何も覚えてないんですよ! 知っていたらあんなメールはしなかった。あのときは夜に地震があって……」
夫「『いまどこ? 大丈夫?』ってメールがきたんです。『大丈夫ですよ。近所のバーで飲んでます』『誰と?』『一人ですよ』。そしたら『一人は寂しくないですか?』って……。『いや、一人のあなたに言われたくないですよ』って返したら、『私は好きこのんで一人なんじゃないんです。誰も私のことなんかわかってくれないだけです』だって」
妻「……(苦笑)」
夫「マスターに『めんどくせえなあ』とか見せながら、『俺は藤田さんのことわかっているつもりですよ。僕は藤田さんのこと好きですよ』って返したんです。そしたら『その好きっていうのはどういう意味ですか?人間的に好きって意味ですか、それとも男女の好きなんですか?』……。僕、『うわあ!』って、もう電源切っちゃった(笑)」
電話を切った後も、夫は深夜まで飲み続けた。
夫「その後、へべれけになって家に帰ったら、今度は電話が鳴って」
妻「私はその間、ずっと電話の前に正座して、返事を待っていたわけですよ」
夫「夜の3時過ぎで、僕、もう意識不明ですよ。でも、『どういうことですか』って聞いてくるから……」
妻「今までもいろいろそういうことがあったんですよ。恋愛対象なのか? 単なるバンドの仲間なのか? これを勘違いしたことで音楽がうまくいかなくなったことが、過去に何度かあったんです。それに30代後半で、もう遊んでいる場合じゃなかった。だからここはハッキリさせないと、と。そしたら彼は『いや、好きですよ』と言った。『その好きっていうのは一生一緒にいてもいいって意味ですか?』って聞いたら『そうですよ』って。『はっ、それはどうもありがとうございます』って言って、電話を切ったんです」
夫「僕は翌朝起きて、『あれ? 昨日の、夢だったのかな』と。ぼんやりしてたら、彼女からメールがきた。タイトルにハートマークが10個くらいついて、本文にもハートがびっしり。スクロールしていったら真ん中くらいに『この日が来るのを待っていました』……」
妻「『失敗した!』って思ったんでしょ?」
夫「うわあ! やっちゃったあ! って(笑)」
(聞き手・中村千晶)
※週刊朝日 2014年11月14日号より抜粋