文筆家の北原みのり氏は、SMTOWN LIVEを楽しみながら、日韓関係の悪化と言われることについて改めて感じたことがあるという。
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韓国の最大手芸能事務所SMエンタテインメントに所属するアーティストが一挙に集うSMTOWN LIVEが今年も東京で開催された。5万5千人収容する味の素スタジアムで連続2日間、さらに全国47都道府県まんべんなく、130館以上の映画館でライブ中継も行われた。
たった2日間のイベントで10万人を軽く超える人々が集まったのだ。しかも2日目は台風で豪雨の中、スターもファンもずぶ濡れになりながらの4時間だ。当日参加した友人に聞けば、その日もほぼ満席で、しかも途中で帰る人は殆(ほとんど)どなく、それどころか「雨のおかげで、スターがずぶ濡れで、よりセクシーで、より盛り上がったよ!」と恍惚とした表情で話してくれるのであった。
私は初日に行ったのだけれど、5万人以上が駅から会場に向かう波に揉まれながら、とても幸福だった。誰も押し合わない、誰もイライラしていない、これから好きな人に会いに行くんだ~というピンクのオーラに包まれた女たちの集団は、平和そのものだ。
そして改めて思うのは、ニュースなどで最近よく聞く「悪化する日韓関係」という文言。いったい、どこで誰が日韓関係を悪化させているのだろう。少なくとも私自身は韓国で「反日感情」が高まっていると感じたことは、一度もない。というより反日感情すら持ってもらえず、日本への関心が薄れているのが実際のところではないか。韓流スターだって、少し前まで日本語を勉強してくれていたのに、今は中国語が主流だよ。
ライブ帰り、「会社では絶対に韓流好きだとは言わない。EXILEが好きということにしている」という30代女性と盛り上がった。韓流が好きと言うと、男たちが「オバサン」と嘲笑したり、「竹島をどう考えるか?」といきなり怒り出したりして面倒なのだという。
咎められるほどに盛り上がるのが、恋愛感情というもの。男政治が「日韓関係」を勝手に悪化したことにしている一方で、日本の女の韓流への熱烈な愛は、さらに地下活動化しているのかもしれない。問題にすべきは、この国の「男女関係」の悪化なのかも。
※ 週刊朝日 2014年11月7 日号
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