激しい戦火にさらされたパレスチナ自治区ガザ。8月26日に合意された長期停戦は、封鎖された「占領地」で暮らす人々に何をもたらすのか。

 今年8月、イスラエル軍による激しい攻撃にさらされているパレスチナ自治区ガザ地区を訪れた。昼夜問わず続く空爆の中、小学校や公園で、戦火を逃れた人々が避難生活を続けていた。

 イスラエルの支配に抵抗するイスラム組織ハマスの軍事トンネルを本格的に破壊するため、7月17日からはイスラエル地上軍も侵攻。地域一帯を破壊された町も少なくない。

 戦車砲の直撃を受けた自宅を逃れ、家族とともに小学校で避難生活を送るムハンマド・マンドゥーハ・サァダディーン(33)は、「ガザからロケットを撃つたびにイスラエルが報復し、互いに非難し合う。同じことの繰り返しだ」と憤る。

「そんなことよりも、問題はガザがいまだに(イスラエルに)“占領”されていることじゃないのか」

 2008~09年のガザ侵攻の際にも、イスラエル軍に自宅を破壊された彼は、人いきれでむせかえる教室で遊ぶ子どもたちを見やりながら言った。

「普通の親なら、子どもには将来のことを考えさせるだろう。でも占領され、いつも理由なく暮らしを壊されるガザに、一体どんな将来があるのか」

 イスラエルによる封鎖でガザでは産業は壊滅、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)によると、失業率は実質80%を超える。“巨大な監獄”ガザを出ていく自由も、人々にはない。

「援助とたまの日雇いで食いつなぐだけの暮らし。将来の夢などかなうわけがないガザで、小遣いひとつやれない父親は、子どもたちに何を言ってやればいい?」

 2100人を超える死者と、約1万8千軒の家屋破壊の被害を与えた50日間の攻撃は、8月26日の長期停戦合意で一応の終息を見せた。しかし、占領地ガザで生きる人々にとって停戦とは、「命が脅かされなくなる」ということでしかない。閉じ込められ、ただやり過ごすだけの日々に、すり切れてゆく生活。自分の将来をどう生きるかを選ぶ自由のない残酷な平和が、ガザで生きる子どもたちにも重くのしかかっている。

週刊朝日  2014年10月24日号

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