全米オープンテニスで準優勝の快挙を成し遂げた錦織(にしこり)圭(24)。プロゴルファーの丸山茂樹氏もその偉業を讃える。

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 いやぁ、夢を見させてもらいました。もちろんテニスの錦織圭君ですよ!

 ニューヨークで開かれた全米オープンテニスで日本選手初の4大大会決勝へ進出。惜しくも準優勝でしたけど、大いなる可能性を感じさせてくれましたよ。

 とにかくこれまでの日本選手と違って、「スピード」「パワー」「技」の三拍子がそろいまくってるんじゃないですか? 今シーズンから指導を受けている元全仏オープン王者のマイケル・チャンさんの指導がいいのか、もともと持ってる才能なのか。

 ゴルフの全英オープンの仕事でご一緒した松岡修造さんも「圭は絶対に4大大会で勝てる選手だ」と言ってましたしね。いろいろ考えながら見てました。

 彼は13歳で単身アメリカにテニス留学したんですね。幼いころから行けば言葉の壁も低いでしょうし、そういう意味では、日本人の顔をしてるんだけど、中身はアメリカ人なんじゃないかと思いますね。

 物事の考え方も英語で教わってる部分が多いと思うし、今大会中に口にした「もう勝てない相手はいないと思うので」なんて、これまでの日本選手からは絶対に出てこなかった言葉ですよ。自分にいまある潜在能力や、地道にスキルアップしてきたことに対する自信が体内にみなぎってますよね。それがいろんなコメントににじみ出てます。

 今回の決勝進出は、ゴルフにたとえたら、全米オープンを最終日最終組で回って、トップタイで最終18番ホールを迎えたようなもの。それを考えると、また「惜しかったなー」って思っちゃいますけどね。

 テニスはどんなにビッグな大会でもコートは同じ。でもゴルフは4大大会になるとセッティングが格段に難しくなる。ゴルフにはそういう難しさもあるんですけどね。でもまあ、トップタイの18番ホールですから、これはもう、僕らとは世界が違う。

 僕もメジャーの最終日に一回トップに立った経験はあります。でもテニスの日本選手はなかなか難しいのかなと思ってましたから、ほんとに驚かされました。

 また、日本で「錦織現象」が起こったのもビックリですよね。全米オープンを独占放送するWOWOWの加入申し込みが相次いだし、東京株式市場で、WOWOWや圭君の所属する日清食品の親会社である日清食品ホールディングス、スポーツ用品メーカー・ヨネックスの株価が上がって。たった一人で、とんでもない影響力ですよ。

 いまをときめく松山英樹と錦織圭との立ち位置はどうなのかというと、僕は同じだと思うんですよ。英樹が今シーズン勝った米PGAツアーの「メモリアル・トーナメント」だって、ちょっとやそっとで優勝できるもんじゃない。でも圭君の「全米オープン」って響きがね、ちょっと並じゃないから。

 圭君は決勝の試合後、こんなコメントを残しました。「優勝トロフィーを獲得できなくて、チームのみんなに申し訳なかったですが、次があると思います」

 ほんとにそう思います。降ってわいた快進撃じゃないから。君には日本を離れて、積み上げてきたものがある。次こそ優勝だ!

週刊朝日 週刊朝日 2014年9月26日号