「放送が終わると、私のもとへも内部のあちこちからメールが来て、『笹井さんほどの人が』と厳しい声が聞こえてきた。笹井氏は放送後、かなり滅入っているとも聞いた。あれが、引き金だったんじゃないか」
笹井氏の京大同級生の医師もこう言う。
「Nスペで、笹井君が(不正の疑いがある)論文をうまくまとめたと報じられていたことが、すごく不満です。学者として能力が高く、頭の中が整理されているからうまいのに……」
理研関係者からNHKに情報提供があったことを思わせる番組内容も笹井氏を追い詰めたと語るのは、精神科医の香山リカ氏だ。
「笹井氏は個人よりも組織や秩序を大事にする性格。会見でも理研のバッジをつけていましたし、職場で自殺したことからも、自身とCDBを一体と考えていたことがうかがえます。孤立無援になったと感じたのではないか」
同番組の後半では、笹井氏と交流もあった理研の鍋島陽一・自己点検検証委員会委員長が、笹井氏や小保方氏についてこんな厳しいコメントを寄せていた。
「本当に大きなものを本人たちは失ったんです。一つの論文のためにね。人生をかけてやってきたことを」
そしてもう一つ、追い詰められていた要因と思われるのはカネの問題だ。笹井氏は、CDBの予算獲得を一手に担っていた。