<13年には、最高裁が、女性から性別変更した男性とその妻の間に、第三者からの精子提供で生まれた子との親子関係を戸籍上も認める決定をした。社会は変わりつつある。

 しかし、「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」の山本蘭代表によると、佐藤さんのように年配になってからの変更は、世間的に高いハードルが待っているという。

「特に、年配になって変わりたいという人は、外見がなかなか伴わないため、周りからも敬遠され、会社を辞めさせられたり、うつになったりするパターンも多い。性同一性障害は一般的に認知されるようになったとはいえ、まだまだ壁はある」(山本さん)>

 仕事も不安です。女性として入社した自分が、男性に変わったら、同じように雇い続けてくれるのかどうか。年配の方が多い職場で、こういう生き方を理解してもらえるだろうか。50歳を過ぎて職がなくなったら、正直、つらいです。もう正社員として雇ってもらうのは難しいでしょう。夫や子どもが周りから何か言われないよう、離婚したら住んでいる町を離れる予定です。

 40代のときは、子どものため、家族のためと思っていたが、50代になって、もっと自分の生き方を求めていいんじゃないかと思った。自分勝手で申し訳ないが、夫と子どもに詫びながら、自分らしく生きていきたいと思っています。

構成 本誌・平井啓子

週刊朝日  2014年7月18日号より抜粋