3月半ば、都内のOLのKさん(46)は女同士でカラオケボックスにいた。

「♪チャーラ、チャーラ、チャーラチャーラチャラ」

 80年代洋楽ヒット、「君の瞳に恋してる」のイントロが流れたところで、

「ハーーーイ!!」

 曲に合わせるように2人組の若い白人男性がKさんたちの部屋に“乱入”してきた。そろって長身でイケメンで、ものまね番組の「ご本人登場」のような勢いに押され、Kさんたちは反射的に彼らにマイクを手渡した。しかし、

「♪アーイラービュー、ベイベー」

 と、歌えたのはサビ部分だけで、あとは調子外れに歌っている。

 Kさんたちが身ぶり手ぶりで質問したところ、北欧から2週間遊びに来ているのだという。

 ビールを注文すると、彼らはすっかりくつろいだ様子でポテトやパスタを次々たいらげていく。その後も一緒に肩を組んで歌ったり、腕相撲をしたり、「国際交流」は盛り上がり、

「アリガト、サヨナラ。ニッポン、ダイスキデス!」

 彼らは満足げに帰っていった。しかしその数分後、トイレに立ったKさん、

「ハーーーーイ!」

 あの2人が別の部屋に入っていく姿を目撃した。どうやら常習犯である。「イケメン外国人」に酔った自分たちが、急に恥ずかしくなったKさんだった。

週刊朝日  2014年6月13日号