知り合いからこのたび下北沢にイケメンリラクゼーションサロンをオープンしたと連絡が入った。なんとスタッフは全員、俳優やモデルなのだという。
自称イケメン評論家の私を思い出してくれたらしく、ぜひ店に来てと呼ばれたので、雨の中それなりの覚悟をして出かけた。
イケメンカフェでさえも、おめめをキラキラさせている若い男性とお話をするという緊張がつきまとうというのに、今度はイケメン整体だ。つまり若い男性に身体を揉まれてしまう。考えただけで緊張でお腹の肉がぷるぷるしてくる。こんなぽっちゃりな自分でも客になっていいのだろうか。
お店に着くと、いきなり数人のイケメンに迎えられさらに緊張が激しくなった。症状を聞かれ、肩こりがひどくて、と控えめに答える。本当は首も腰も足も、ええ、全身が疲れているのだけれど。
60分8000円のコースをお願いすることになり、Tシャツとズボンの施術着に着替えると、私はアザラシのようにのそっとベッドの上にうつぶせになった。私を担当することになったのは、雑誌モデルをしている、甘えたような顔が可愛い20代前半の男子。若い彼の手がこちらに伸びてくるのがわかったが、あまりの恥ずかしさに正視できず、目を閉じた。
大きな手のひらが、がっちりと肩を掴み、ぎゅっ、と揉む。その瞬間、コリにイタ気持ち良さが走った。彼の手つきは恋人のそれではなく、立派にプロの整体師のものだった。ドキドキしているのはこちら側だけらしく、彼は淡々とマッサージを続けていく。やっと鼓動が落ち着いてきたその時、オーナーが誰かを伴って現れた。長い前髪と切れ長の瞳が美しい男の子で、歌手をしているという。
「今、店が空いてますんで、もうひとりおつけしますね」
なんと二人のセラピストが左右に立ち、私の左右の腕を一斉に揉み始めた。彼らからすると疲れたオバチャンのコリをほぐしてあげているくらいの感覚なのだろうけれど、こちらはもう、若いの2人にお世話になっちゃって、まさにめくるめく思い……。
施術後は、なんともいえない爽快感が身体に満ちていた。彼らはモデルだけでは生活が不安定なので、手に職をつけたくて整体を覚えたのだという。
このイケメン整体、30代以上の女性客中心らしい。このごろ、いろんな職業がイケメン化していて、ほんとうにうれし恥ずかしである。