豪州海上保安局が公表したマレーシア機の残骸? (写真:豪国防省提供 ) (c)朝日新聞社 @@写禁
豪州海上保安局が公表したマレーシア機の残骸? (写真:豪国防省提供 ) (c)朝日新聞社 @@写禁

 3月8日、クアラルンプール発北京行きのマレーシア航空機が消息を絶った。多くの国や捜査機関が協力し捜索に当たっているが、未だ有力な手がかりは見つかっていない。少ない情報ゆえに謎は深まる一方。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏がリポートする。

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 テロか、事故か。

 10日以上も消息不明となり、謎が謎を呼んでいたマレーシア航空機の行方。

 オーストラリア海上保安局(AMSA)は3月20日、同機の可能性のある二つの漂流物体をインド洋で見つけたと発表し、衛星画像を公開した。漂流物体はそれぞれ長さが約24メートルと5メートル程度で、最初の撮影日付は16日という。

 これが同機の残骸だと推測されるのは、まずはその発見位置が、かねて推測されていたインド洋方面であったこと。それに、それだけの大きさの漂流物は珍しく、主翼の可能性があるからだ。ただし、これで一件落着とはいかない。

 その大きさは、貨物船などに載せられる大型コンテナとほぼ同じでもあるのだ。また、墜落した際に自動的に作動するELT(緊急位置発信機)の信号も探知されていない。

 したがって、やはり現物を発見・回収して分析するまで、断定はできない。

「マレーシア当局の調査能力、情報集約の低さ、広報体制が整っていなかったことから、マレーシア機に関する情報は二転三転。とにかく最初から情報が少なかった。そのため、かえってどのような状況も想定できました。それで確度の低い情報が、それぞれの推測の根拠とされ、メディアで取りざたされ、混乱に拍車をかけた」(自衛隊関係者)

 そもそもマレーシア軍のレーダー情報は、消息不明に気づくのが遅れた上、曖昧なものだったという。

「通信断絶から約7時間後に通信衛星にキャッチされた信号も、100%確実と断言できるものではなかった。自宅にフライトシミュレーターを持っていた機長などによる、人為的なテロ、事故などを想定した調査が現在、進んでいるようだが、実は電気系統の破損および酸素不足による操縦士の失神などによって操縦不能のまま空を彷徨(さまよ)う“ゾンビ・プレーン”の可能性も、まだ十分に残されている」(同前)

 いずれにせよ、現在、インド洋での漂流物の発見・回収作業が急がれるが、それも難航が予想される。

 海面の漂流物はレーダーで探知することがほぼ不可能なため、航空機もしくは船舶で目視するしかないが、現場は天候・視界が不順な上、衛星写真の撮影時からかなり時間が経っており、どこまで海流に流されたかもわからない。すでに沈んでしまっているかもしれない。謎が解明できるのか、まだ不透明なようだ。

週刊朝日 2014年4月4日号