日本社会を席巻してきた「韓流」だが、その熱は冷めつつあるようだ。2011年の内閣府の世論調査では、韓国に「親しみを感じる」と答えた人が62.2%に達するなど、韓国のイメージを向上させてきた。しかし、本誌記者・渡辺哲哉の取材によると、そのブームの終焉に韓国側は焦りを見せていないようだ。

 ブームは11年夏、東京・お台場のフジテレビ本社前で起こった大規模な「嫌韓」デモを境に陰りをみせ始める。TBS関係者は言う。

「もともと『日本のドラマより安上がりだから』という理由で放送し始めたが、視聴率が下落しメリットがなくなった。12年の李明博前大統領の竹島上陸で大きく潮目が変わり、ネット上でも韓国ドラマを放映するだけで口汚くののしられるありさま。いつの間にか、“厄介者”扱いされていた」

 12年の内閣府の同じ調査で「親しみを感じる」が39.2%に急落。最近の韓国メディアは、「韓国音楽の著作権使用料 日本で60%に減少」「昨年の来韓日本人22%減」など、悲観的な記事ばかりだ。

 しかし韓国政府関係者は、さほど心配はしていないという。

「DVDを買う人は減ったが、レンタルDVDの貸し出しの数字は変わらない。地上波を入り口として衛星放送、有料番組へとつなげていくパターンは少なくなるが、スマホなどの売り上げが大きな打撃を受けるとは思わない。日本市場でのすそ野は相当広がった」

 こうした見方は日本側も同様だ。

「最悪と言ってもいいほどの日韓関係だが、韓国製品の売り上げの下落には歩留まり感がある。韓流ブームを境に、日本における韓国のプレゼンスが相当高まった。政治でギクシャクしても、相手国の国民によって製品は変わらず支持され、売れ続ける。韓国の戦略がまんまと当たったということだ」(内閣官房幹部)

 韓国が「クールコリア(かっこいい韓国)」と呼ばれる政策を採り始めたのは、1997年のアジア通貨危機がきっかけだった。韓国は、翌年、当時の金大中大統領が「文化大統領宣言」を発表。文化を21世紀の基幹産業とすることを決定。実際に99年度にはコンテンツ予算を一挙に6倍に増やし、文化産業の育成に本腰を入れ始めた。

「韓国の国策の中心を担うといわれるサムスン経済研究所のリポートに、はっきりと国家戦略が記してある。映画やドラマなど大衆文化を相手国ではやらせ、派生商品を販売し、韓国製品の売り上げを増やす。そして韓国の好感度アップにつなげ、海外から憧れられる国になるというもの。『日本はすでに相手ではない』とも読める内容が記してあり、かなりなめられてるなと感じた」(元経産省幹部)

週刊朝日 2014年4月4日号