
岐阜といえば、飛騨高山に白川郷の合掌造り集落、長良川の鵜飼い。いやいやいや、いまJリーグ2部の「FC岐阜」がアツいのだ。
今季は地元の有名事業家が提供した資金を元手に、新監督にあのラモス瑠偉(57)を迎え、GK川口能活(38)、MF三都主アレサンドロ(36)という元日本代表コンビら10人を補強した。
過去3年のJ2での成績は、最下位(20位)、ブービー(21位)、ブービー(21位)。そんな“弱小チーム”がレジェンドたちを迎えて息を吹き返し、開幕2連勝と上々の船出を果たした。
ラモス監督は「課題も修正点も多い」と、いつもながらの辛口だが、サポーターの喜びはひとしおだ。
「開幕連勝なんて初めて。三都主選手の正確なフリーキックでチャンスを作り、2試合連続で3点取れるんだから、夢のよう。生え抜き選手の目の色も変わってきてるし、ことしは期待大です」(37歳会社員)
「移籍してすぐに主将になった川口選手の存在が大きい。試合中は監督より激しいゲキを飛ばしています。守備陣は一瞬も気を抜かなくなった」(21歳大学生)
昨年のホーム平均入場者数は約4500人。今季は劇的に変わったチームを応援しようと開幕戦に1万1千人、第2戦には7900人が長良川競技場に詰めかけた。ファンクラブ会員数も昨年の2倍の3千人に迫る勢いで、営業担当者もホクホクだ。
「グッズも大変な人気で、1500円のタオルマフラーから、1万円以上のレプリカユニホームまで飛ぶように売れています。昨年は苦労したスポンサー探しも、ことしは先方から『広告を出したい』との電話が次々とかかってくる。いま、競技場内の広告スペースは満杯状態なので、慌てて広告を設置できる場所を作っています」(チーム広報の林幹広さん)
気の早いファンからは「ラモス体制1年目での優勝」と「J1昇格」の声が上がっている。果たして、前年ブービーからの奇跡のVはあるのか。
業界初のJ2専門誌「月刊J2マガジン」の高野直樹記者はこう見る。
「J2は11月までの長丁場で、42試合もある。岐阜は先発の平均年齢が30歳を超えており、シーズン後半の疲労などを考えると、さすがに優勝は厳しいでしょう。ただし、昇格プレーオフ圏内の6位なら可能性はある。そのためには、出番の少ない選手や若手をいかにうま
く起用するか。それに苦境に陥ったとき、チームをまとめるリーダーシップが不可欠。これらはラモス監督の指導力、マネジメント力にかかっています」
かつて監督として、古巣の東京ヴェルディをJ1に復帰させた実績を持つラモス氏。美濃で再現なるか。
※週刊朝日 2014年3月28日号