俳優、演出家、脚本家として活躍する河原雅彦氏は、壇蜜に会って感じた魅力をこう語る。

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 さあ、今回も「ハァハァ」しながら愛しの壇蜜様について。

 前回は『タレント・壇蜜』が世に放つエポックな魅力を、超前のめりで考察したわけですが、今回はですね、実際にお会いした時に感じた『人間・壇蜜』にフォーカスを当てていこうかと。

 念願の初対面は、僕が映画誌で連載を受け持つ関係で、彼女の最新主演作『地球防衛未亡人』(恐ろしく素晴らしいタイトル!)の取材も兼ねた対談でした。もちろんお会いする前から相当ウキウキなわけですが、その一方で妙な緊張感もあって。一応、僕がホストを務める対談ですから。変幻自在のボキャブラリーを駆使するキレ者の彼女にイニシアティブを取られないかとハラハラもするわけですよ。

 で、いざお会いしてみると、TVで拝見するよりずいぶん小柄で華奢(きゃしゃ)な印象。でも、そのインテリジェンスは想像以上に半端なく……。いやあ、これは決して悪い意味じゃなくてね? 対談の序盤から“計られてる感”がしたんス。「このお方、私の何%でお話ししたら良い方かしら?」みたいな。ご本人はいたって控えめでおっとりとした例の感じなんだけど、「この方に相応(ふさわ)しい自分でありたい」と、どうしようもなく相手に思わせてしまう“人たらしオーラ”とでも申しましょうか。なので、たらされまくった身としては、ミーハー心を瞬時に封印し、対談という名の“感性のラリー”に序盤からフルスロットルで臨む他なかったっていうね。短い時間でしたけど、いろんなお話をきかせていただきました。主演作についてはもちろん、女優としての私、グラビアタレントとしての私etc.……。

 でね、感じたんです。「あー、この人“壇蜜のプロ”なんだなあ」って。彼女にとって壇蜜というのは一つの役割であって、彼女は彼女なりの誠実さと謙虚さでもって世間のニーズに目一杯で応えている。言うならば、『こだわりなんて何もない。求められれば腰砕け上等でなんでもやります。それが私の生きる道!』的な? そんな達観性と無類のサービス精神が合わさって、彼女が求められること以上の成果をここまで上げてきたのではないか? とはいえ、役割を果たし切るには冷静さがマスト。壇蜜という現象から一歩距離を取り、常に客観性を伴いながらその場その場でアジャストしてこれた彼女は、やっぱり底なしのセンスの持ち主だわぁ……と誠に自分勝手な空想に耽(ふけ)る次第。思えば第一印象で強烈に感じた“計られてる感”も、「いくらでも尽くしますよ。どのくらいお望みですか?」という彼女の生き様フェロモンにすっかりあてられてしまっただけかもなあって。そう思うと、壇蜜っていう一見罰当たり風な芸名も絶妙な具合に感じたりして。

 さて、肝心の最新主演映画ですが、〈入籍直後の夫を怪獣に踏みつぶされた薄幸の美女が地球防衛軍に中途採用され、戦闘機に乗り込み怪獣への復讐を果たそうとするも、攻撃を加えれば加えるほど機内で謎の発情を起こしてしまい……〉といった超絶トンデモ映画。ウルトラセブンのダン隊員とも奇跡のコラボを展開! よもやこれほどまでにZ級の映画に出演するとは……。うーん、一生ついていきます、壇蜜様!!

週刊朝日  2014年3月21日号