今年45歳になる脚本家の河原雅彦氏が、昨年末の人生初体験について語った。
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明けましたね、新年。今年もよろしくお願いしまっす!と、雑に挨拶を書き記したところで本題。
以前、マクロビオティックにハマった知人に振り回され、「マクロビやるなら家でやれ!」と魂の咆哮をかました自分が、先月、あろうことか人生初の健康断食を敢行。場所は伊豆高原のとある施設。6泊7日という本格コースに挑んできた。
世に溢れるなんちゃって健康志向の輩とどう違うんだと問われれば、都議会での追及に揺れまくった猪瀬直樹ばりに挙動不審になってしまわなくもないが、そのきっかけは、「とにかく頭がすっきりする」と仕事仲間に勧められたから。もうね、長年ずーっと悩まされてたの、“頭ぼーっとする症候群”。今日は朝からなんだか頭が働かないなあ……と思ってたら、一日中そのまんまだったりね。みなさんも経験ございません? 別に病気じゃないので生活に支障はないっちゃないけど、感性が鈍るのって仕事柄、結構なストレスだったりするんですよ。だから、決してダイエットとか体質改善とか生活習慣の見直しとか、そういう手垢にまみれた大義名分じゃなくてね、「頭しゃきっとな毎日!」を獲得するため、断食知識もまるで無いまま勢いだけで申し込んでしまったというわけ(ま、断食を済ませた今となっては、それらの見直しに結局行き着いてしまうのだけど)。
さて、断食初日。「当日は朝から(水以外)何も摂取しないで下さい」との言いつけを守り、お昼頃施設入り。その前夜は未練たらしく高級中華を無理矢理かっこんだっけ。それは間もなく捕まるであろう逃走犯が、しゃかりきに風俗をハシゴする様に似ているかも知れないし、まったく似ていないかも知れない。
施設に入るとすぐに面談室に通され、日頃の生活習慣や健康状態をチェック。そして断食中の心得などを丁寧にレクチャー。今回の6泊7日コースの場合、「3日断食3日補食」との説明を受ける。
断食後、急にもとの食生活に戻すと体にアホみたく負担をかけるらしく、断食した日数と同じだけの日にちをかけて徐々に普通食に戻していくのが基本だとか。1週間なにも食べない覚悟だった自分としては、ほっと一安心。とはいえ、これまで丸一日、胃になにもいれないなんて、ひどい二日酔いの時ぐらいな自分にとって、3日間もの断食はかなりの未知数……。前日の中華屋で友人が語る、「空腹時は判断が鈍って洗脳されやすいから、この手の施設って宗教関連も多いのだよ」との言葉が脳裏をよぎる。
「ここ、サティアンだったらどうしよう……」
じわじわ押し寄せてくるえも言われぬ緊張感。断食中は、酵母をお酢とお水でわった特製酵母ドリンクと、館内数カ所に置いてあるポットに入ったルイボス茶&お水だけで過ごすことになる。基本、毎朝8時の体操が終われば、あとはまったり自由行動なわけだが、空きっ腹なところに心を解放させておいてその隙に……。人生初の断食体験はこうして戦々恐々と幕を開けたのであった。そんなこんなで、つ・づ・く。
※週刊朝日 2014年1月24日号