製造した94品目、640万袋の回収という空前の騒ぎを起こしているアクリフーズ。健康被害を訴える人は1千人を超える。
消費者の健康とともに心配されるのが、風評被害だ。2008年1月に発覚した「中国製冷凍ギョーザ事件」では、農薬のメタミドホスが入ったギョーザを食べた千葉と兵庫の計10人が中毒症状を起こし、うち子ども1人が一時、重体となった。
この影響で国内工場で製造された冷凍食品も敬遠され、年間の生産量は前年の152万トンから5万6千トン落ち込んだ。
ただ今回は、様子が違う。ある大手食品メーカーの社員は「この2週間、スーパーなどを回った感触」とした上で、こう話す。
「売り上げはかなり伸びていますね。アクリフーズ社のコロッケはどれも人気が高かった。それが回収された分だけ、うちのコロッケにドッとお客さんが流れている感じです。ピザやナゲットの売れ行きも順調。6年前のギョーザ事件のこともあったので心配していましたが、逆にプラスになってホッとしています」
本誌記者も都内のスーパーを6軒回ったが、従業員の多くは、「冷凍食品は年明けも変わらず人気です」「製品の裏面をチェックしながら、大体みなさん、他社製品を買っていかれます」と話していた。
冷凍食品大手のニチレイフーズ、ニッスイ、テーブルマークの広報担当者に尋ねてみたが、おおむね「年明け以降の正確な売り上げは出していませんが、悪い影響が出ているとの報告は上がっていない」との回答だった。
食品業界に詳しい流通ジャーナリストの内田裕雄氏はこう指摘する。
「共働きの家庭が増えたこともあり、簡単に調理できる冷凍食品のニーズは高まっています。国内市場規模も6400億円と大きい。今回の農薬混入問題は国内の工場で起きたことで衝撃的だったのですが、冷凍食品の購入をやめるわけにはいかない。『他社の製品を買えばいい』と思った人も多かったのではないでしょうか」
ただし、農薬混入の原因が長らくわからないと、消費者心理にもマイナスの影響を与えるのは間違いない。
全容解明が急務なことに変わりはないのだ。
※週刊朝日 2014年1月24日号