特定秘密保護法案の反対集会が各地で開かれ、物々しい雰囲気の中で幕を閉じた臨時国会。強行採決に踏み切った自民党の行く末について、東大教授の松原隆一郎氏と放送大教授の御厨貴氏が対談した。
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御厨:(話は)自民党に戻りますが、政権運営に完全にミソをつけてしまった。
松原:保守とは何かにかかわってくる話です。政治権力に秘密は伴うもの。国民が誘拐されて政府が身代金を払ったかどうかは、話題にもできない。それでも信頼してもらうため、説得の努力を惜しまないのが保守です。
御厨:そうですね。
松原:ところが安倍晋三首相(59)は、維新の会の共同代表である橋下徹大阪市長(44)と同じで、選挙後は全権委任されたと勘違いしたんじゃないか。法案を成立させたいなら、国民や野党にまず丁寧にお願いをすること。野党は反対し続けるだろうけど、国民の中には「企業にも秘密はあるよな」と共感する人もいますから。
御厨:自民党はこれから下落傾向でしょうね。
松原:結局は景気頼みですよね。
御厨:もともと景気でスタートした政権だし、しょうがない。特定秘密保護法に足を取られたので、国家戦略特区関連法などは最後にばっと通した形です。
松原:「成長戦略実行国会」と安倍さんは自分で言っていたんですけど。
御厨:やっぱり安倍さんの経済政策は付け焼き刃だったのかなあ。しゃべるべき内容がなくなってきている。
松原:ここにきてものすごい数の諮問委員会やら審議会を作っています。
御厨:絞り込みが足りないんですよ。しかしあれだけ官僚や内閣をうまくリードしてきた首相官邸が、国会運営をできなかった。今の官邸の主流派がイケイケの経済産業省だからです。彼らは会期内に法案を詰め込みますが、日程を組み立てることができない。主導権をとられた財務省ならできるけど、意地悪だから冷ややかに見ている。最近、財務省の連中と会うと別の意味で元気がいいよ(笑)。
※週刊朝日 2014年1月3・10日号