漫画家の長谷川町子さんの代表作「サザエさん」と「いじわるばあさん」は、光と影のような関係にある。「いじわるばあさん」は、きわどいいたずらを仕掛けるが、どこか憎めない。その魅力とは?
1966(昭和41)年から71(昭和46)年に「サンデー毎日」で連載された「いじわるばあさん」。長谷川町子さんは「サザエさん」や「エプロンおばさん」を新聞などで連載していたが、人情味あふれる作風に行き詰まっていた。
「自分の中にある、ふつふつとしたもののはけ口を見いだせなかったようです」(長谷川町子美術館学芸員・橋本野乃子さん)
そんな中、この作品が生まれた。愛想が悪い人の家にうな重を20人前も注文したり、不動産屋に売り家を案内させておいて、トイレだけ借りて帰るなど、容赦ないが、子どもや動物に愛情を注ぐ一面も描かれる。
「息子たちの家をたらい回しにされ、愛されたくても愛されない。そんな自分をいたずらで発散しつつも、時折見せる寂しさが魅力です」
「サザエさん」とは対照的な作品。光と影が対になって、共に強烈な個性を放つ。
※週刊朝日 2013年12月13日号