景気が悪くなるとともに、スポーツカーはどんどん「高値」の花となり、憧れだった数々の名車が姿を消してしまった。しかし、ここへきて再び走る楽しさを求める人が増えてきた。自動車会社も「エコ一辺倒」から「エコも走りも両立」にシフトチェンジ。そうしたニーズに、自動車会社は「軽自動車のスポーツカー」という形で応えている。
「経済性に優れ、走りが楽しめる」(ダイハツ工業の上田亨執行役員)
軽自動車の売れ行きは相変わらず好調だ。10月の国内販売台数でもトップ10のうち6車種を占めた。価格や税制の面で有利だからだ。東京モーターショーでは2車種、ホンダの「S660」とダイハツの「コペン」が登場した。S660は、ホンダの伊東孝紳社長いわく、「とにかくカッコいい、ホンダらしい車をつくりたい」と、若い技術者の発想をもとにつくりあげた。子育てを終えた夫婦などの利用を想定しているという。15年に量産が始まる。
ダイハツのコペンは、スマートフォンのカバーのように車体の外板を「着せ替え」できることが特徴だ。今後さまざまな会社の協力を得て、外板の種類を増やしたいという。エンジンなどの部品が透けて見えるモデルも検討中とか。そんな車で走れば、目立つのは確実だ。
「国内各社はエコカーなど実用的な車で需要を喚起してきたが、景気が上向くと同時にユーザーは乗って楽しい趣味の車も求めるようになっています。スポーツカーでは欧州勢が大きな存在感を持っていますが、日本メーカーに盛り返してほしい」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表)
※週刊朝日 2013年12月6日号