日本が誇る「おもてなし」はどこへ行ったのか。ホテルのレストランなどで、メニュー表示と異なる食材を使っていた阪急阪神ホテルズ(本社・大阪市)。“偽装”は7年以上にもわたって行われていた。その系列で、日本を代表する高級ホテルでも同様の事実が発覚。

 こんなことが、なぜ起きたのだろう。関西地方のホテルに約40年勤めたホテル・レストランコンサルタントの友澤弘氏はこう話す。

「ホテルでは定期的に『予算会議』が開かれ、食材の仕入れ担当者はいい食材を安く入手することを求められます。原価率を下げろというプレッシャーが背景にあったのかもしれません」

 実際、“誤表示”によって、メニューの表記よりも安価な食材が使われている。同社の出崎弘社長は会見で、「会社として必要以上に原価を削り、利益を捻出しろという経営はしていない」と断言した。だが一方で、「原価を抑えることが高い評価を受ける空気が社内にあった」(阪急阪神ホテルズ系列の調理部門で10年以上勤務していたという元従業員)という証言もある。

 阪急阪神ホテルズはここ10年で急激に拡大。02年に阪急ホテルズが第一ホテルと合併。06年にホテル阪神の全株式を取得し、08年に現在の形となった。

「東京と比べ、大阪では少ないパイの奪い合いが起こり、エリア間の競争が厳しかったと推測されます」と、ホテル業界に詳しい関係者。また観光ジャーナリストの千葉千枝子さんによれば、「みずほ銀行のように、体質の違うホテルをいくつも吸収・合併したので、各ホテルの意識にばらつきがあり、経営陣も把握し切れていなかったのではないか」という見方も。また、日本でも指折りの高級ホテル、ザ・リッツ・カールトン大阪での問題発覚は世間を驚かせた。

「仮に誤表示としても、高級イメージを確立したリッツでは絶対にあってはいけなかった」(先の関係者)

 これが日本の「おもてなし」の実情だとしたら、問題の根は深い。

週刊朝日 2013年11月8日号