北海道道南を走るJR江差線。1936(昭和11)年の全線開通から間もなく77周年を迎え、2014年5月12日の木古内―江差間廃線に向かって走り続けている。
長年、住民の生活を支え、観光客を魅了してきた。木古内駅を出発した列車は、溪谷や山間を通り抜けて日本海沿いを走り、港町の江差駅へと到着する。約1時間のローカル線ならではの小旅行が楽しめる。
江差町在住の辻晴穂(はるお)さん(63)は、その姿に魅せられ、約30年間カメラを向け続けてきた。
「自然の中、急曲線や急勾配の連続に日本海を背景にした線路が横切るという珍しい光景もあり、変化に富んだ路線が魅力です」
昨年8月、JR北海道が木古内―江差間廃止の検討に入った。
「毎日が江差線最後の日になるので、悔いのないよう感動的な写真を撮りたいと思いました」
薬局を営む傍ら、ほぼ毎日沿線に赴き、“最後の姿”を収める。そんな中、JR北海道のレール異常放置問題が発覚。江差線も35カ所の異常が明らかになった。
「廃線となる区間の一部は、道路の状態も悪く不便。ローカル線の存続に対する議論が不十分なまま廃線が決まったように思います。この一件でも、JRには安全のために細部まで目を配る責任があります」
既に週末は、廃線を惜しむ観光客が駅の外まで並ぶほどの盛況ぶり。これから紅葉を迎え、雪景色を駆け抜ける姿が楽しめる。
「江差線最後の日まで、どうか安全運行を守ってほしい」
※週刊朝日 2013年10月18日号