8月、大噴煙が大きく報じられた桜島。島の中心にある“御岳”は今も昔も赤いマグマを噴いている。2009年に桜島に魅せられ、鹿児島に通うようになった写真家の宮武健仁氏がレポートする。

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 先日の桜島の噴煙と鹿児島市内の降灰のニュースは、まだ記憶に新しいだろう。私は火山のない四国育ちのため、「火山の火」への好奇心から桜島の写真を撮り続け、4年を超えた。

 爆発の瞬間には、昭和火口から真っ黒な噴石が煙の尾を引きながら勢いよく飛び出す。夜には、噴石が真っ赤に焼けて輝いて見え、まさしく「火の山」となる。火口から3キロほど離れた外周道路から噴火の瞬間を待っていると、突然音もなく、無数の赤い光の筋が放物線を描いて飛び出す。黒い斜面に落ちると、石が割れて明るいオレンジ色の火の花が咲く。数秒ほど遅れて「ドドドドーン!」と爆発音が聞こえ、続いて「ガラガラ」と岩が斜面を転がる音が迫ってくる。夜通し「鳴動」と呼ばれるジェット機のような噴気音が溶岩台地全体に轟くこともある。

 桜島は年間噴火回数が900回前後、国内唯一の日常的に噴火する火山だ。このような山は世界でも珍しい。頻繁に噴火し適度にガス抜きがされるため、近年は大きな災害もなく、火山弾に焼かれた「火の神」の領域と人間の生活圏は、火口から約2キロの地点で線引きされている。

 ここ数年、世界的に地殻変動が活発化し、火山大国の日本も注意が必要だが、大規模な噴火には明らかな前兆が見えるという。必要以上に恐れずに、科学的な目で冷静に見るべきだろう。ぜひ桜島を訪ねて、大地の息吹を感じて欲しい。恵みの温泉や特産を味わいながら、火山灰と共に暮らす鹿児島の方々の知恵を学べるはずだ。

週刊朝日  2013年9月20日号