NHKの朝ドラ「あまちゃん」にも出演している俳優の古田新太氏は、夏場の劇場における「トイレ」問題を解決するために、とあるものをすすめている。
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現在おいらは、舞台本番中である。記録的な猛暑の中、穴倉生活を送っております。
「室内の仕事でいいね」と言うなかれ。確かにこの時期、屋外ロケは辛(つら)い。日焼けはするし、それこそ熱中症に要注意である。ましてや、時代劇なんて最悪だ。侍なんて演じた日にゃあ、合戦なんかで鎧(よろい)着た日にゃあ、あー考えたくない。京都の皆様、ご苦労様です。
ところでおいらだ。「劇場はエアコンが利いていて、せいぜい2、3時間で終わるんだからいいですね」って、そんなことはない。舞台上は、常に40℃以上である。照明を四方八方から浴びて、まるで電子レンジ状態である。故にエアコンを利かせる。しかし、客席は照明があたっていないから寒くなる。そうなるとお客様から苦情が出て、エアコンが弱くなる。舞台上の温度が上昇して、役者が疲弊する。なかなかいい塩梅(あんばい)にならない。
そこで発生する夏場の劇場問題は「トイレ」である。今出演中の「盲導犬」は、休憩無しの90分と非常に短い芝居なので問題も少ないが、長い芝居の休憩時間、特に女性は長蛇の列となる。暑い外、熱中症対策に水分を多く取る。そして劇場に入ると必要以上に冷えている。これでトイレを我慢しろと言うのは、昔懐かしい「THEガマン」である。「奥さん、あなた膀胱炎を取りますか? それとも失禁を取りますか?」(みのもんたさん風)である。ただでさえ女性は男性より尿道が短く、おしっこを我慢し難いのだ。これでは高い入場料を払って拷問を受けにいくようなものだ。
そこで提案なのだが「オムツ」のすすめである。以前本欄で「男性のお洒落ウイッグがもっと一般的になればいいのに」と書いた。若干内容がかぶるが、恥ずかしくない「オムツ」の開発をお願いしたい。これだけ生理用品の機能が向上している昨今、薄手の可愛いオムツはできないものだろうか。キャラクター付きの、いや、大人の女性が穿(は)いても、お洒落でセクシーなオムツというのはできないものだろうか。1回分のおしっこを収めるくらいの物があれば、行楽シーズンの高速道路の渋滞や、絶対外せない会合、受験等で非常に役立つと思うのだが。
さて、ここまで長々と書いてきたが、ここからが本題である。今おいらが劇場生活を送っていることは先に書いたが、約1カ月間、限られたメンバーとずっといる訳だ。楽屋のトイレは共同だ。おいらは毎日、同じ時間に大をしにいく。その時のトイレットペーパーだ! だらしなくビヨヨーンとクシャクシャと垂れ下がっているのだ。毎日だ! 本当に毎回だ! 何故だ? トイレットペーパーカッターが付いているにもかかわらず、奴は毎回引き千切っているのだ。カッターを押さえて斜め上に引き上げれば、綺麗に切れるのに。不快だ。カッターを使ってくれ。公共の場所は皆が気持ちよく使えるようにと考えないのか奴は。最近おいらは、共演者やスタッフを見ながら、「こいつか、それともこいつか?」と疑心暗鬼になっている。
この間、あるドライブインで大を済ませてペーパーを見たら、カッター部分が上方にそり上げられていた。き、切れない。ペーパーが切れない。おお、日本人のモラルよ。
※週刊朝日 2013年8月16・23日号