近年にない勢いで猛威をふるっている風疹。ワクチンはもうすぐ底をつき、妊婦や家族の不安も広がる。
風疹で危惧されているのは、胎児への影響だ。妊娠前半期に風疹にかかると、赤ちゃんが目や耳、心臓などに障害を持つ「先天性風疹症候群(CRS)」となる可能性があるのだ。国立感染研によると、今回の流行が始まった2012年以降、12人のCRSの報告がある。
「幼い子どもへのワクチン接種が十分でなかった1995年ごろまでは、風疹の感染者が今よりもかなり多く、CRSを持って生まれる子どもが年間100人ほどいるときもありました。風疹による自然流産や感染がわかったための人工中絶は、その10倍以上だったとされています。そもそも風疹ワクチンの予防接種が始まったのも、CRSを防ぐためでした」(福岡市立西部療育センターのセンター長で小児科医の宮崎千明氏)
ワクチン接種は、子どもが受ける定期接種と、妊婦の周囲の人や風疹ウイルスに対する抗体を持たない大人が希望して接種する任意接種とがある。厚労省によると、今年5月の任意接種は32万回。4月の3倍以上で、例年は年間でも30万回の接種だったのに比べ、異例の接種数だ。その結果、風疹ワクチンの生産が追いつかなくなっている。
この状況を受け、厚労省が6月14日に、ワクチンが不足するという見通しを出したわけだ。当時の推定では、8月に3万1749本、9月に1万8296本が不足するという試算だった。
だが、ワクチン不足が報じられたことで、接種希望者が医療機関に殺到した。医療現場ではすでに風疹ワクチンが足りなくなり、多くの医療機関は任意接種をセーブし始めている。なかには必要な定期接種を見合わせると公表した医療機関もある。
このままでは8月には厚労省の見通しをはるかに上回るワクチン不足に陥り、風疹大流行とともに、CRSの拡大も懸念される。
※週刊朝日 2013年7月19日号