作家の林真理子さんは、イラストレーターの南伸坊さんの「ライフワーク」がお気に入りだという。それは、南さんが話題の人物になりきって写真撮影する『本人伝説』。林さんはそのモノマネのクオリティの高さに脱帽したという。
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林:あんまりそっくりなんで大笑いしちゃいますけど、特に私たちの業界を震撼させたのが伊集院静さん。伊集院さんご本人も「俺、『オール読物』にこの写真、撮られたっけ」と思っていたら、奥様(女優の篠ひろ子さん)にも「これ、あなたでしょう?」と言われたって。(笑)
南:アハハハ。そんなことはないと思うけど、話としてはありがたいですよね。
林:いや、私もなんの違和感もなく「あ、伊集院さんだ」と思って見ていましたよ。
南:載る場所の力というのがあるんですね。「考える人」の表紙で養老孟司さんになったんですけど、あんなふざけたものが雑誌の表紙になるって、常識として考えられないじゃないですか。だからパッと見て「あ、養老さんだ」と思う人が多かったみたいです。
林:あと、すごいなと思ったのは松田聖子さん。ほんとに聖子になってるんですよね。
南:僕は似てないと思うんだけど。林さんは松田聖子がお好きだから、きっとイヤだったんじゃない?
林:いや、全然そんなことないですよ。聖子の、あのなんとも言えないつくり笑いっぽいのを把握して、それを表現してみせて、ちゃんと聖子が聖子になっているから、私、感動しちゃいましたよ。単に似せるんじゃなくて、その人の本質をつかんでいるところがすごいですよね。
南:そこまで考えているわけじゃなくて、写真を見て、なるべく本人になるようにしているだけでね。僕が対象を批評して、この人はこうだって決めつけるんじゃなくて、その人の身になってみるという、僕の冗談のようなものなんです。
林:でも、さすがに浅田真央ちゃんはちょっと無理が……(笑)。小顔の人ってやりづらいですよね。
南:小顔の人は、胴体を大きくすれば相対的に小さくなる。でも、間に合わないけどね。相当デカイから。(笑)
※週刊朝日 2012年12月14日号