今回の総選挙の重要テーマの一つは、世襲問題である。3年前の前回衆院選のマニフェストで「世襲制限」を設けたはずの自民党からは、この“追い風”を受けて、またぞろ世襲候補たちが出馬する。
自民党にとって“いい世襲”とは、小泉純一郎元首相(70)から神奈川11区の地盤を譲り受けた進次郎氏(31)だ。11月28日、横須賀市内で報道陣をシャットアウトして開かれた決起大会で、その進次郎氏は、弁舌たくましく自民党批判を繰り広げた。
「『自民党は反省が足りない!』と強い口調で言い切っていた。父の若いころより演説はうまい。何度も拍手が沸き起こっていたよ」(後援会の男性)
もっとも、そんな“できた息子”ばかりではない。保守王国の広島4区では、中川秀直元幹事長(68)が引退し、次男の俊直氏(42)が出馬する。
ただ、地元で俊直氏の立場は安泰ではない。2006年の東広島市長選に出馬したものの、保守分裂の戦いを強いられて落選。そのしこりは前回衆院選で、秀直氏が民主党候補に敗れる大波乱につながった。おかげで自民党は現在も一枚岩ではなく、今回は、「政治経験を積まずに世襲か」(支援者)という逆風も加わった。
同じく保守王国の群馬4区では、福田康夫元首相(76)が引退表明し、長男の達夫氏(45)が受け継ぐ。「ライバルのわれわれから見ても、まじめで腰が低く、敵をつくらないタイプの人物です。ただ、祖父と父に比べて“小者”の印象ですね」(民主党関係者)。
北海道12区からは、武部勤元幹事長(71)の長男、新氏(42)が出馬する。武部氏は、かねて世襲に批判的な発言を繰り返してきたはずだが――。「いろいろ言われるでしょうが、新さんは公募で選ばれたんです。親子関係だって、師弟に近い厳しい関係だったと思いますよ。そりゃ、選挙戦ではお父さんからのご支援があるでしょうが……。政策に明るく国家観もしっかりしていて、その辺はお父さんより上だと思います」(後援会幹部)。
地元の対立陣営は、こう切り捨てる。「公募をしようが、世襲は世襲。あれだけ批判しておきながら、自分は別か!」
※週刊朝日 2012年12月14日号