がんとどう向き合ったか。そこに人生が集約されてくる。10月16日発売の週刊朝日ムック「がんで『困った』ときに開く本2013」(朝日新聞出版)から、著名人の生き様をお届けする。

 2011年末、診察のついでに検査を受け、子宮頸がんが見つかった女優の古村比呂さん(46)。海外での仕事が入り、環境が変わるとホルモンバランスが崩れやすいため、14年ぶりに訪れた産婦人科での出来事だった。不正出血などの自覚症状が一切なかったため「検査が間違っているのでは」と思ったという。12年1月、あらためて精密検査を受けることになった。

「診察室で、『これががん細胞ですよ』と画像を見せられ、急に現実と向き合わざるを得ませんでした」

 すぐに考えたのは女優業と3人の息子のこと。古村さんは思わず医師に「まだ死ねませんので!」と訴えたという。唯一の希望は、医師からの早期発見だと告げられたことだった。2月、子宮頸部の一部を切除した。しかしその結果、がんが周囲の組織にまで広がっていることが判明。医師から子宮の全摘出を提案された。

「抵抗もあって、動揺しましたね。自分がどう変わるのか、想像がつかなかったんです。子宮を温存する選択もあったのですが、リスクなども考え、全摘出をすることにしました」

 3月の手術前日、古村さん3人のわが子に出会わせてくれた子宮への感謝をブログに綴っている。「子宮さん お疲れさま」

 現在は、リンパ浮腫(ふしゅ)や腸閉塞などの後遺症にならないよう、体調のコントロールに努めながら女優業などに励む日々。がんをきっかけに、家族の助け合いが増えたことが「この病気からの贈り物」だったと話す。

週刊朝日 2012年10月26日号