■ランキングの読み方と病院選び

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載している治療数ランキングでは、手術と放射線治療、それぞれの治療数と内訳を掲載している。前立腺がんでは、放射線治療は手術の補助的な位置づけではなく、手術と同等のウェートを占めるからだ。

 初期であれば手術と放射線治療の治療成績(治療後の生存期間)に大きな差はないので、どちらもバランスよく手がける病院がいいだろう。治療数は一つの目安だが、と前置きして、北里大学病院の田畑健一医師はこう話す。

「その地域の人口や病院数などの要素もあって難しいのですが、年間、手術で50例、放射線治療で50例治療数があれば、信頼がおけるのではないでしょうか」

 全般的にみて、治療数の多さは経験値の高さにつながり、がんの根治率や治療の合併症(尿漏れや性機能障害、消化管出血など)の率の低さなどに反映されることが多い。

 ランキングを見ると、手術数と放射線治療数に大きな差がある病院や、ロボット手術と腹腔鏡手術の件数に差がある病院がみられる。また、放射線治療の内訳を見ても、外照射と小線源療法(低線量)のどちらも手がける病院は少ない。病院の設備や医師の考え方などで治療法をしぼっているところが多いようだ。

「いろいろな治療法をおこなっている病院でセカンドオピニオンを受けて、治療法を決めてから、自分が希望する治療法を専門的におこなっている病院を紹介してもらうのもいいでしょう」(田畑医師)

 新しい外照射であるSBRTやVMATを実施している病院は、まだ限られている。LDRよりも病状が進んだ症例に適応されるHDR(高線量率組織内照射)も、実施している病院はあまり多くない。また、2018年に保険適用になった重粒子線や陽子線などの粒子線治療も、受けられる病院は限られている。病院のホームページなどで、どのような放射線治療をおこなっているかをチェックするといいだろう。

「前立腺がんの進行は悪性度が高くなければゆっくりで、次の治療への移行のタイミングの見極めが重要になります。長く付き合える医師を選んで、納得いくまで主治医と話し、最善の治療を受けるようにしてください」(井口医師)

(文/別所 文)

≪取材した医師≫
大阪市立大学病院 泌尿器科講師 井口太郎 医師
北里大学病院 泌尿器科講師 田畑健一 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より