週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「大腸がん内視鏡治療」の解説を紹介する。
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大腸がん内視鏡治療の方法は主に三つ。ポリペクトミー、EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)である。近年主流になっているESDは病変部を浮かび上がらせたのちに、電気メスで周囲を切開し、専用のメスではがし取る。2018年4月に、保険適用となる症例が拡大した。がんの最大径「2~5センチ」とされていたが、上限が撤廃され、「2センチ以上の早期大腸がん」となった。大きながんでもESDで取り切れるというデータがそろってきたからだ。
同時に、2センチ以下であっても、粘膜下層が硬くなる線維化した部位がある症例も保険適用となった。2センチ以下のがんは通常EMRの対象だが、線維化を伴う症例にはスネア(輪っか状のワイヤー)をかけにくいため、メスを使うESDが使えるようになった。これらは『大腸癌治療ガイドライン2019年版』にも明記されている。広島大学病院の岡志郎医師は説明する。
「病変部の周囲を切開し粘膜下層を少しはがしたうえでスネアをかけて切除するハイブリッドESDなどの中間的な治療も、今回のガイドラインに記載されています。症例ごとの最適な治療法選択のために、術前の診断がいっそう重要になってきたといえます」
10センチ以上の大きながんでも治療の対象となったわけだが、さいたま赤十字病院の笹島圭太医師は次のような見解だ。
「ESDは広く実施されるようになり、治療成績も全国的に向上しています。特に、難度の高い病変を治療する病院は、ESDの治療数の増加とともに技術も向上し、そのためにさらに治療数を増やしているのが最近の傾向ではないでしょうか」