実際、私も表現意図を実現するためにモノクロ変換は積極的に行いますし、NDフィルターを使ってスローシャッターも多用します。現像時に多少のレタッチもします。

 しかし、自然風景を写すには、ないものを足さない、あるものは消さない、という基本的なスタンスを意識することが重要だと考えています。

 自然は特に語ることもなく、ただそこに淡々とある。

 それをモチーフにした写真表現を行うためには、そこにある現状を変えるのではなく、木が折れているのであればなぜ折れたのか、木が枯れたのであればなぜ枯れたのか、そういうところにまで思いをはせる表現になってほしい。

 さまざまなことを全部受け入れて、例えば2019年の秋は紅葉が美しくなかったのであれば、それをあるがままに写真に撮っていく。

 自然にかかわっていることの多い私たちが、特に心がけなければならないことかもしれません。(聞き手・構成/アサヒカメラ編集部・米倉昭仁)

※『アサヒカメラ』2020年3月号より抜粋。本誌では中西氏のインタビュー全文と作品が掲載されている。