太田医師が目安として挙げる手術数は年間30例。

 「食道がんは患者数が少ないため、医師も経験を積みにくい。手術数の多さは病院の信頼性の高さにつながります。当院も年間30~40例を維持しています。日本食道学会の食道外科専門医の資格を持つ医師もいればより安心です」(太田医師)

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載している手術数ランキングには、胸腔鏡手術数も掲載している。胸腔鏡手術には高い技術力が必要なため、胸腔鏡手術を希望する場合は、胸腔鏡の手術数に注目し、日本内視鏡外科学会の技術認定取得者のいる病院かも確認しよう。

 食道がんの術後は肺炎や縫合不全などの合併症率が高く、肺炎は10%程度のリスクがある。合併症予防には術前術後の管理が重要となる。

 「術後の肺炎予防には、術前から禁酒・禁煙指導のほか、歯科衛生士らによる口腔ケア、食道狭窄予防には栄養士による栄養管理も重要です」(渡邊医師)

 食道がんは進行すると食道の周囲の臓器にも広がっていく。大動脈にがんが浸潤した場合は、血管にステントを留置することで安全に食道の切除が可能となるという。その場合は「心臓血管外科と連携がとれる食道チームがあれば安心」と、太田医師。

 食道がんは高齢者に多いため、併存疾患も多く、重複がんも見つかりやすい。他科との連携がとれる病院を選んでおきたい。

 また、食道がんは再発率も高く、I期で約10%、II期で約30%、III期では約50%。術後の定期検査などフォローも大切だ。

 「地方在住なら術前化学療法は地元の病院で、手術は都市部の専門病院で受ける選択肢もある」と渡邊医師。治療や術前術後管理の連携状況を確認しておこう。

 手術できない進行がんで化学放射線療法後に問題となるのは、がんの残存や再発だ。太田医師によると、追加実施される救済手術での合併症の発生率は通常の手術の約10倍という。

 隣接臓器へのがんの浸潤が疑われて切除不能とされた例でも、手術を前提に化学療法を実施し、がんの縮小後にコンバージョン手術に移行することもある。

「より安全に確実に根治できる治療を考えてくれる病院を選んでください」(太田医師)
(文/石川美香子)

≪取材した医師≫
がん研有明病院 消化器外科部長 食道外科部長 渡邊雅之 医師
東京医科大学病院 消化器外科 小児外科講師 太田喜洋 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より

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