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「部下がなぜか動いてくれない」「社内で企画が通らない」「取引先との交渉がうまくいかない」――。そんなとき、状況を打破するために必要なのは、「相手の話を上手に聴く」スキルだ。
その真髄を、一般社団法人日本傾聴能力開発協会の代表理事・岩松正史氏による著書『その聴き方では、部下は動きません。』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。
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話し方にTPO(時間・場所・場合)があるように、聴き方にもTPOがあります。
目上の人に対して「おい!」とタメ口をきいたら、「なんだ、その口のきき方は!」とトラブルが起きます。このように、聴き方の間違いが原因によるトラブルも日々確実に起きているのです。
でも、聴き方の間違いには、なかなか気づきません。なぜなら、言い間違いはその場ですぐ訂正してもらえますが、聴き方の間違いは外からはわかりづらいいので、誰も指摘してくれません。勘違いしたまま過ぎ去ってしまうのです。
■「聴き方」を間違えると、「伝え方」も間違う
では、聴き方の間違いに気づくことはできないのでしょうか?
そんなことはありません。こんな経験はないでしょうか。よかれと思って、親切心でアドバイスしてあげたときに、
「いっていることはわかるんですけど……」
「できたら……やってみます」
「だいたい……わかりました……」
というふうにスッキリしない反応が返ってくることです。
スッキリしない反応が返ってくると、人は「伝え方がまずかった」と反省します。でもそれは、間違いです。そのときがまさに、聴き方を間違った瞬間です。伝え方ではなく、「聴き方」を間違えたのです。
会話には必ず、表向きに聞こえてくる言葉と、その根っこにある言葉をいいたくなる気持ちの2つが含まれています。後者のことを、「主訴」と呼んでいます。
表面的な言葉ではなく、根っこの訴え、つまり、主訴をそのまま聴きとることができれば、伝える内容もずれず、会話がすれ違わないはずです。しかし、表面の言葉だけ聞き、根っこを聴きそびれると、それに対するアドバイスもずれて、的外れになってしまうのです