私たちはもともと聴くスキルを持っていません。なぜなら、聴き方を習った経験がないからです。
唯一、聴き方について学習した経験があるとすれば、学校時代に、先生が騒がしい生徒たちに向かって「先生が話している最中は、黙って静かにして聴きなさい!」と怒られたくらいでしょうか。その経験があるため、私たちには「聴くこと=黙ること」という習慣が身についてしまっています。
また、ちゃんと理解される「聴かれ方」もされた経験がないため、聴くよさがそもそもわかりません。その一方で、「この人は話を聴かない人だなぁ」とか「この人にいっても無駄だ」と仕分ける感覚は、みんなが持っていたりします。
これはきっと潜在意識として、わかってくれていないことを察知するアンテナを誰もが持っているからなのでしょう。ちゃんと話を聴いてくれる人には話しかけやすいのは、聴いてもらった経験の有無に関係なくみんな同じです。
だからこそ、聴く力を身につけていく意味と価値があります。ちゃんと話を聴いてくれる人と思われるだけで、さまざまな情報が入ってきやすくなるのですから。
■シンプルかつ実用的な傾聴の秘策
気持ちをしっかり聴きとれるようになるためには、継続した傾聴の練習が必要です。それには正直、時間がかかります。
でも、ご安心ください。傾聴の練習が十分できない人でも、簡単に気持ちを聴きとる方法があります。
私自身がこの10年ほど使っている、シンプルかつ実用的な傾聴の秘策をご紹介します。会話しているとき常に相手が、「スッキリしているか? モヤモヤしているか?」。その一点に注目して聴くのです。
「え? それだけ?」と思ったでしょう。はい、それだけで十分です。
たとえば部下に「こんなふうにやってみたら!」とアドバイスをしたとします。そのときの相手の反応が、「はい! やってみます!」ならスッキリ。「はい……そう……ですね……。できるだけ……やって……みます……」なら、モヤモヤです。