また、日本において評価が高い認定制度として、公益財団法人日本スポーツ協会による「公認アスレティックトレーナー」の養成制度があります。これは、スポーツドクターやコーチらと緊密に協力しながら、選手の安全・健康管理、スポーツ外傷・障害の予防、救急対応、アスレティックリハビリテーションおよび体力トレーニング、コンディショニングなどにあたるアスレティックトレーナーを養成するもので、規定のカリキュラムを学習した後、理論試験と実技試験に合格した人が認定されます。ただし、この養成講座を受講するには、都道府県体育・スポーツ協会、中央競技団体などからの推薦を受けることが必須とされており、応募できる人数が限られているために認定者の数は多くありません。
これ以外にも、日本には「トレーナー」を認定する団体がたくさんあるのですが、それらはすべて民間資格です。その教育内容に統一した基準はないため、レベルはさまざまであるのが実情といえるでしょう。
一方、アスレティックトレーナー発祥の地であるアメリカでは、しっかりとした教育制度と国家資格があります。それが国際的にもよく知られる、全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)認定のアスレティックトレーナー(ATC)資格です。日本人トレーナーの中にも、アメリカに留学してこのNATA認定アスレティックトレーナー資格を取得してきた人たちがいます。彼らは、知識が豊富でかつ英語も堪能であり、プロスポーツチームの専属トレーナーとして世界で活動したり、スポーツ医学に関する研究でいい業績を上げたりしています。ちなみに、このNATA認定のアスレティックトレーナーは、アメリカ医学会によって認められた、看護士や理学療法士などの準医療従事者と同等の資格です。
また、アメリカ同様の資格制度はカナダにもあります。こちらは、カナディアン・アスレティックセラピスト協会(CATA)認定アスレティックセラピストと呼ばれ、NATA-ATCと互換協定が結ばれています。
日本では今のところトレーナーの教育システムが十分に確立されていないため、その整備が課題となっています。今後は、若いアスリートや健康な人のみならず、高齢者や、糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある人、整形外科的疾患がある人などに対しても、スポーツドクターと協力しながら適切なトレーニング指導がおこなえるようなトレーナーの養成が必要でしょう。