だが、「古田はケチで」のような処世術に関する非難めいた話ばかりで、「オレは(野球以外も含めて)教育したつもりなのだけど」とも。

 なぜこのような非難をしたのか?“野村語録”に親しんでいる人ならおわかりのはずだが、非難は「人間は無視、賞賛、非難の3段階で試される」の最上級で、「オレが力を認めている証拠」に相当する。

 おそらく野村氏は、06年にヤクルトの監督に就任した古田に「間違いなく監督として成功するだろう」と期待をかけたのに、結果を出せなかったことに対する残念な気持ちから、「将来もう一度監督になる機会があったら、みんなに信頼されるリーダーになれ」と、処世術で苦労した自らの経験も踏まえ、人生の大先輩として提言したかったのかもしれない。

 今となっては本人に真意を確認する術もないが、そう思えてならない。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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