プロ野球のキャンプ情報がニュースを騒がせ、「令和の怪物」と呼ばれる佐々木朗希(ロッテ)ら、今季の活躍が期待される選手に注目が集まっている。「野球で視聴率が取れなくなった」といわれて久しいが、実は球場を訪れる人は増えていて、2019年シーズンは過去最高の2653万6962人の観客動員数を記録した。
一見、順風満帆に見える日本のプロ野球界だが、現状から将来を不安視している人がいる。プロ野球評論家の江本孟紀氏だ。江本氏は、昨年10月に元千葉ロッテマリーンズの里崎智也氏(野球解説者)との共著『プロ野球解説者「無敵バッテリー」がゆく 野球の正論』(徳間書店)、11月に『人生9回裏の戦い方』(竹書房)を続けて出版し、野球界から現代の日本社会の問題まで、幅広く論じている。私生活では胃がんを経験し、「今は9回が終わって延長戦を生きている」と語る江本さんは、なぜ、プロ野球の将来に不安を感じているのか。その理由を聞いた。
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──2019年もプロ野球の観客動員数は過去最多を記録し、プロ野球人気はさらに年々高まっています。
江本(以下、同じ):今のプロ野球人気はまだまだ続くでしょうが、いずれ衰退するかもしれません。観客はいずれ減り始めるかもしれません。
──最近では広島ファンの「カープ女子」、オリックスファンの「オリ姫」といった女性客も増えています。かつては「男が楽しむもの」だったプロ野球は変わってきていますが。
球場に行く観客が増えたのはいいことですが、最近では、先発したのに2、3回でノックアウトされても観客から拍手が起きる。我々の時代だったらありえなかったことです。ファンの見方も変わってきました。
19年シーズンは、規定投球回数(143イニング)に達した投手はセ・リーグで9人、パ・リーグは6人しかいませんでした。「先発完投」なんていう言葉は死語になってしまいます。このままでは、球界から「エース」がいなくなります。エースの力投がない野球は、魅力がないと思うのですが……。
──先発完投型の投手がいなくなったのは、なぜでしょうか。