共通点は「医療現場のコミュニケーションをよりよいものにする」こと。それを目的にSNSやウェブ連載でコラムニストとしても活動する2人の医師、総合南東北病院の外科医・中山祐次郎医師と京都大学の皮膚科医・大塚篤司医師が、2月25日発売の週刊朝日ムック『いい病院2020』の企画で初めて対談した。患者と医師がすれ違ってしまうのはなぜか? 医師をソムリエに例える2人が、「標準治療の外側」に対してどう向き合うかについて語った。前編の記事「若い世代のがん患者にどう最後まで寄り添う?」に引き続き、2人の医師が吐露した苦悩医師が本音を吐露する対談の後編。
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――医師が本音を言う・言わない場面として思いつくのが、「告知」の瞬間です。
大塚篤司医師(以下、大塚):余命に関しては、告知しないことが一般的になっています。昔は「あと1年です」などと言うこともありましたが、それは不正確なものです。どんな医師でも、半年先の状態でさえ読めません。
中山祐次郎医師(以下、中山):「どうしても」と聞かれた場合は、5年生存率を伝えています。「あなたと同じぐらい病気が進んだ人が100人いたら、5年後に生きている人は何人います。生きているほうに入るか、亡くなるほうに入るか、ここはわかりません」。それだけを伝える。「あと1年です」などと言ってしまうと、患者さんのなかでカウントダウンが始まってしまいます。でも大塚先生の専門のメラノーマ(悪性黒色腫・皮膚がんの一種)だと、患者さんに言わなければならないこともあるのではないですか?
大塚:複雑すぎて言語化するのが難しいですが……医者になりたてのころ、自分の残り時間は知っておいたほうがいいと信じていた時期がありました。がんを宣告されたら、あと何年生きられるかを知って、そのうえで残りの人生をがんばろうというのが患者さんの考えだと思っていました。だから、とくに20代30代の人には余命を言うようにしていたんです。
中山:なるほど……。
大塚:でもそのなかに、「余命を知りたくない」と言う子がいたんです。「そんなことは考えたくない」と。それで考え方が変わりました。20代30代は死というものを受け入れられる段階ではないし、その患者さんが望むのは寛解(症状が抑えられた状態)ではなく治癒なんです。ほかの人と同じように余命を全うするというのが目標。それにメラノーマは、オプジーボ(免疫チェックポイント阻害薬)が劇的に効く人が、わずかながらいます。治癒の可能性があるんです。だから「あと何年生きられますか」と聞かれたら「こちらは治すつもりで治療します」と伝えます。