ライザップは、経営不振で赤字に陥っている会社に狙いを定め、次々に安く買収。こうして負ののれんを積み増すことで、短期間で営業利益を拡大させることに成功したのです。

■ライザップとソフトバンクGとの意外な共通点とは?

 ただし、皆さんもお気づきかと思いますが、負ののれんによって得た利益は、あくまで“帳簿上の数字の増加”に過ぎません。別の見方をすれば、業績不振に陥った企業を将来立て直して利益を出すことを前提としており、その利益を先取りして計上していると言えます。

 従って、買収後に赤字体質を改善できる見込みがなくなれば、負ののれんとして計上した利益は根拠がなくなり、逆に損失を計上しなくてはなりません。

 実際、ライザップは、買収企業の経営再建がうまくいかず、それらの企業価値を減損した結果、18年度末決算の最終損益は193億円の赤字に転落。買収計画を凍結する一方で、グループ企業の売却や200強の店舗を閉鎖するなど、経営戦略の大きな見直しを余儀なくされることになりました。

 ここで改めて前編記事「ソフトバンクの『決算書』から読み解く 売上が増えなくても、利益が爆増するカラクリ」で解説したソフトバンクGとライザップを比べてみましょう。両社の爆発的な増益の原動力となったのは、いずれも結果ではなく「予測の利益」でした。そしていずれもその見込みが外れ、企業価値を下方修正したことで大きな損失が計上され、突然赤字に転落したのです。

 一見不可解に見える「大増益からの赤字転落」は、こうした利益計上の仕組みを理解すれば、「なるほど」と納得できるのでないでしょうか。

 2社の例からわかる通り、利益は限度こそあれ「意図的に作れる」ものであり、「利益さえ出ていれば経営は順調」と安易に判断することは危険です。大事なのは「利益の質」なのです。

■「予測の利益」と「現実の利益」を見分けるテクニック

 では、何を基準に「利益の質」を測ればいいのでしょうか。そのバロメーターの一つとなるのが、「キャッシュ・フロー計算書」です。

次のページ
企業が発表する決算書は3つの書類で構成される