17年度には1兆円超えの増益としながら、19年度の中間決算では155億円の赤字となったソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)。決算書を読む時に大切なのは、「利益の質」に着目することだと説く『100分でわかる!決算書「超分析」入門』シリーズの著者・佐伯良隆氏に、具体的にどのように読み解けばいいのか聞いた。
※「ソフトバンクの『決算書』から読み解く 売上が増えなくても、利益が爆増するカラクリ」よりつづく
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■企業を買うほど、利益が増える?
こうした現象(決算書上の急激な増益や減益)は、投資だけではなく「企業買収」によっても起こります。その最たる例が、「結果にコミットする」の売り文句で一躍有名になったライザップ社です。
ライザップの営業利益は、15年度末で31億円だったものの、17年度末には135億円と約100億円増加。わずか2年で4.5倍増と急成長しました。
その原動力となったのは、ダイエットジムの会員数の急増……ではなく、実は企業買収(M&A)です。同社は、衣料品チェーンのジーンズメイトやゲーム・CD販売のワンダーコーポレーションなど、次々に他業種の企業を買収し子会社化。17年度の営業利益135億円のうち、半分以上を占める74億円は、こうした企業買収によって得た利益であり、本業のパーソナルジム等で得た利益(61億円)を上回っていました。
ではなぜ、会社を買うと利益が出るのか。買収にお金がかかることは想像できますが、利益が増えるといわれてもピンとこないかもしれません。そのからくりは、「負ののれん」という会計処理法にあります。
負ののれんとは、簡単に言うと「会社を割安に買ったことで生じる帳簿上の利益」のこと。例えば、10億円の純資産価値がある会社を4億円で買った(つまり6億円安く買った)とします。この差額の6億円は「負ののれん」として、IFRSの決算書では営業利益に計上できるのです。