実は、前年度に同社がわずか1年で1兆円の増益を達成できたのも、こうした「他社への投資」が原動力となっています。
ソフトバンクGは、17年5月に投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を設立。このSVFを通じて、世界各地の有望なベンチャー企業に対し、総額10兆円を超える投資を行っています。
注目したいのは、これら投資先の企業価値が上がれば上がるほど、ソフトバンクGの「営業利益」が増える仕組みになっていることです。
投資による利益で想定しやすいのは、企業からの配当金や、株を売却することで得られるキャピタルゲイン(売買差益)です。これらは実際に手元に現金が入ってくるため「実現益」と呼ばれます。
しかしソフトバンクGの営業利益に含まれるのは、実現益だけではありません。SVFの投資先の企業価値が上昇したことで“帳簿上生じた利益”である「未実現評価益」も含まれます。これは売買が実現していない評価益、つまり「(実際には売却していないが)仮に今この企業を売却すればこれぐらいの利益になる」と見込んだ利益(含み益)のことです。
同社が採用している「IFRS(国際会計基準)」の決算書では、実現益のほか、この未実現評価益も「営業利益」に含めるものと定めています。同社の18年度の有価証券報告書によると、SVFによる投資で得た収益の約8割は未実現評価益。
つまりソフトバンクGの1兆円の増益は、携帯電話事業など「実業」(売上)の拡大ではなく、100社近くある投資先企業の「企業価値(時価)の上昇」によってもたらされていたのです。
■企業価値は誰が決めているのか?
ウィワーク社に対する投資の反省点として、孫社長は「ウィワーク社の価値を高く見過ぎてしまった」と語っています。では、そもそも企業価値は、誰がどのように決めるのでしょうか。
投資先が上場企業であれば、「株価×発行済み株式数」で時価総額、つまり現在の企業価値が計算できます。この場合の企業価値は市場が決めるため、経営側(売り手)の恣意性はありません。