足立:私もほぼ賛成ですが、あえてブランド広告的な訴求をやる意味を挙げるとしたら、何でしょうか。

西口:「リマインダー」としては使えます。「昔はそのブランドを使っていたけど、最近使っていないな」という人たちをもう1回戻すとき、その人たちに思い出してもらうために、「あなたが持っていたブランドイメージこうでしたよね、こんないいことがありましたよね」というのをテレビCMなどでやると、「また使ってみようかな」となって、戻ってきてくれたりします。しかしながら、それでマーケティング担当者は「ユーザー層が拡大した」と誤解してしまうのです。実はこれは、これまでにつくったユーザー層を再獲得しただけで、ユーザー層はまったく拡大していません。だからブランド広告的なものが終わったら、またユーザーは離れていくわけです。

足立:これまでと同じブランディング施策を繰り返していたらダメですよね。決してユーザー層は広がりません。

西口:認知していてブランドを使ったことがある人たちと、認知はしているけれどもまだ使ったことがない人たちに対して、やるべき施策は、まったく違うし、認知していない人たちに対してやるべき施策も、これまた違います。なので、先ほど半分くらいは無駄と言いましたが、現状の繰り返しをやめて、各ターゲットに応じた丁寧な施策をやると、最終的には広告費用は増えていくかもしれません。実は多くの場合、業績が落ちて従来のブランド広告をやめてみると、売り上げに影響しないことがわかります。そこで、「何だ、広告はいらないじゃん」と判断するのは、これも大間違いで、それまで間違った広告にお金を使っていたことが判明しただけで、本当はやるべき広告投資があるわけです。

足立:それでも営業・販売促進部門は、「ほら見たことか」と言い出すでしょうね。やっぱりブランディングは無駄金だと……。

西口:販売促進は販売促進で、間違っているところがあるわけです。値引きすれば、売り上げが獲得できてしまうと考えている人があまりにも多い。値引きも「リマインダー」に近くて、顧客は「昔使っていたし、20%安いなら、また使ってみるか」と思うことが多いだけで、実際のところ、値引きでは、ほぼ新しいユーザーを獲得できません。やはり新規のユーザーを開拓するには、プロモーション施策でどれだけ「新しい独自性のある便益メッセージ」を打ち出すかということが重要なのです。本当は、販売促進の部門もそれをやらなければいけません。

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「ブランディング信仰」はなぜできた?