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「マーケティング」とは一体何なのか?
【対談相手で、マーケティングの最前線にいる土合朋宏氏はこちら】
言葉は定着すれど、業務は複雑化するばかりのマーケティングだが、実は大原則があった……。
P&G、ヘンケル、ワールド、マクドナルド、そして現在はPokemon GOなどを制作するナイアンティックに在籍する経営とマーケティングのスペシャリストである足立光氏と、日本コカ・コーラ、20世紀フォックス ホームエンターテイメントなどを経て、現在は外資系映画配給会社の日本におけるマーケティングの責任者として最前線にいる土合朋宏氏が、共著『世界的優良企業の実例に学ぶ「あなたの知らない」マーケティング大原則』を刊行。これを記念して、「日本の広告とアメリカの広告の違い」についてのお二人の対談を特別に公開する。
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足立:土合さんと私のキャリアは外資系企業からスタートしています。日本企業の広告と外資系の広告の違いを、やはり感じますよね?
土合:そうですね、特にアメリカとはすごく違います。米企業のマーケティングのコミュニケーションの基本は、「ブランドのコア価値を伝えていく」ことです。つまり、「うちのブランドは素晴らしい」という前提に立っているわけです。だから、米企業はブランドの良さ、いいところを磨いて、ブランドそのものがより一層輝くように広告を開発していきます。一方、日本の広告は「ブランドはそれほどでもないけど」という前提に立っているケースが少なくありません。多いのは、広告する製品・サービスの近くに光っているものを持ってきて、その製品・サービスが輝いて見えるようにする、というやり方です。
足立:「セレブリティ広告」が最もわかりやすい例でしょう。日本では、有名タレントなどに商品を持たせて、何となく「あれ? 商品も光ってる!」と思わせるようなテレビCMが非常に多い。海外のセレブも広告でよく見かけますね。
土合:残念ながら、実際に輝きが鈍いブランドというのもあるわけです。その場合には、セレブリティ広告は、もちろん、正しいやり方だと思います。ただ日本とアメリカでは、受け手のとらえ方の違いが大きいのかもしれません。つまり、アメリカ人は自分の内面にとても強固なものがあって、「誰が何と言おうと、それは輝いている」と思う傾向が強くて、日本人はその逆で、内面にそれほど強固なものがなくて、「みんなが輝いていると言っているから、それは輝いている」と思う傾向が強いのかもしれません。